第20話

「レイシア、翔、今日も頼んだぞ」

「はい、父上」

レイシアは、王にお辞儀をして王宮を出た。


「レイシアさん、エルフの村は近いんですか?」

「ああ、わりと近いな」

レイシアと翔は海沿いの道を歩いた。

見通しもよく、特にモンスターも盗賊も見当たらない。


「それにしても、問題が次々に起こるな」

レイシアはため息をついた。

翔は言った。

「でも、それだけ強くなれるってことじゃないですか?」


「ああ、そうだな」

レイシアは翔の言葉に頷いた。

海沿いの道は潮風が心地よかった。


しばらく歩くと、エルフの村がある森についた。

「翔、森の中にはゴブリンが住んでいる。気をつけろ」

「はい、レイシアさん」

そう言った瞬間、翔はゴブリンに襲われた。


「出たな!?」

翔はコカトリスの剣を取り出すと、ゴブリンに斬り掛かった。

コカトリスの剣で切られたゴブリンは、石化した。


「すごいですね、この剣」

「ああ。翔も身のこなし方がレベルアップしたな」

レイシアが感心した。

「そろそろ村が見えてきますか?」

翔がレイシアに聞いた。


「あの、大樹の下辺りだ」

レイシアが答えた。

大きな世界樹の元には、集落があった。


「ミスティ王国のレイシアだ! 誰かいるか!?」

レイシアが大きな声を出すと、奥の方からエルフの長老が現れた。

「おお、良く来て下さった」

「セイレーンが出たというのは本当ですか?」


エルフの長老は力なく頷いた。

「セイレーンに村の宝の、水晶が盗まれてしまった」

「それではセイレーンは何処に?」

翔が長老に尋ねた。

「海沿いの崖に洞窟がある。その中に隠れておる」

長老はそう言うと、海の方を指さした。


「それでは、行って参ります」

レイシアは礼をして、長老の指さす方に向かった。

翔も慌てて、その後を追った。


「レイシアさん、何か秘策は有るんですか?」

翔の問いかけにレイシアは首を振った。

「そっか、出たとこ勝負か」

話しながら歩いていると、崖の洞窟が見えてきた。


「いくぞ、翔」

「はい、レイシアさん」

洞窟に入ると、不思議な歌が聞こえてきた。

「歌を聴くな、翔」

「はい、分かりました」

翔は歌を打ち消すように、返事をした。


セイレーンは大きな水晶を抱えていた。

「その水晶を返せ!」

「シャアア!!!」

セイレーンは水を打ち上げた。

「わあっ」

翔は水を浴びて驚いた。


翔は気を取り直して、コカトリスの剣で斬り掛かった。

剣がセイレーンの腕に当たった。セイレーンの腕が石化する。

落とされた水晶は、岩に落ちる前にレイシアが拾い上げた。


「翔、とどめを!!」

「はい、レイシアさん!!」

翔は、腕をかばって倒れ込んだセイレーンの胸に、コカトリスの剣を突き立てた。

「ギャオオオオオ」

セイレーンは石化した。


「レイシアさん、やりましたね」

「ああ、楽勝だったな」

石化したセイレーンの脇に転がっていた魔石を、翔はコカトリスの剣に吸わせた。


レイシアと翔はエルフの村に戻った。

「長老、水晶を取り戻しました。セイレーンは倒しました」

「おお、助かった。ありがとう、レイシア、翔」

長老は水晶を受け取ると、村の祭壇にそれを置いた。

「ミスティ王国の王と王女にも、よろしく伝えてくれ」

「はい、長老」


レイシアと翔は、ミスティ王国に戻った。

王と女王は、レイシア達がセイレーンを倒したことと、水晶が戻ったことを聞いて安堵した。翔とレイシアは部屋に戻った。


「翔、伝説の剣は強くなったのか?」

「えっと、見てみます」

そう言って、翔はコカトリスの剣をヒノキの棒に戻した。

ステータスが表示された。


特殊能力追加 眠りの歌


「どうやら、セイレーンの眠りの歌を覚えたようです」

「伝説の剣は何処まで強くなるんだろうな?」

レイシアは不思議そうに、翔の持つヒノキの棒を見つめた。


「キングドラゴンも倒せるんじゃないですか?」

「それには私たちがまだ弱すぎる」

レイシアは冷静にそう言った。


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