原石同士がぶつかり合い 若々しい火花が散る

学生時代の文芸部を振り返る作品として上梓された本作は、筆者の恐怖と葛藤と戦意とが荒々しく表現されている。
拝読しながら、私も高校時代の自分を思い出し、気恥ずかしさと共に青年期に持っていた自分の姿が蘇ってきた。
それは摩耗した今の自分から見れば笑い話である。
しかし、悔しさを握りしめ過ぎて歳を取った私の目には、宵闇に咲く花火のように鮮やかで羨望として映るものである。
誰しもが通る道であるだけに心へすとんと収まるのだが、それはそうした心情を活写できる筆者の技量に裏打ちされている。

それと同時に、個人的にはこれをもう十年先に見詰め直した作品を読んでみたいという興味からレビューを書かせていただいた。
社会の中で磨かれた原石の輝きを見たいというのは、あまりに業が深すぎるかもしれないが、そうした我儘を行いたくなるのが本作の良さである。

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