文芸部を作品内に出したかったのでその研究で読み始めました。この作品に出てくるのは飽くまでも作者が体験した文芸部の姿でしかないのですけど、それでもこう言う文芸部のあるのだなと大変参考になりましたね。
一人の想像で作り上げたものではない現実の出来事。だからこそ予想もつかないしリアリティがあって良かったです。夢中になって読みましたもの。読み終えた後に感じたのは、いい作品を読ませてくださりありがとうございましたと言う感謝の気持ちですね。
作品に文芸部を出したい人は、この作品を読んで参考にするといいですよ。色々なヒントが散りばめられていますから。
登場人物の性格の濃さ、方言を含んだ発言のリアリティ、大袈裟な描写はないけれど表皮一枚下の激情をたしかに感じる心理描写。
文芸部に所属していたことはないのですが、主人公と一体化するような読み味であり、また「文芸部とは、大学とはこんな雰囲気なのか」といった未知の世界を味わえる部分もあり、徹頭徹尾飽きることなく、とても楽しく読ませて頂きました。
中盤までは問題児な先輩方との戦いの日々や心の葛藤が描かれていて、ハラハラドキドキしながら読み進めたのですが、後半の穏やかな文芸部で、自身の問題と向き合っていく主人公の静かな姿勢が、一番心に残りました。最後の小説とあとがきは、本当に「よかった……よかったねぇ……」と思いながら読みましたし、三年間文芸部で戦ってきた主人公の成長が分かって、終盤は卒業式のようなしんみりした気持ちになりました。
この作品に掲載されている短編小説は、どれも前もって読ませて貰っていたのですが「こんなことを考えながら書いていたのか」「ここまで緻密に計算していたのか」ということが分かって、新しい気持ちで読み直すことができました。
「エッセイは書きやすいですよ」と作者さんは仰ってましたが、ここまで赤裸々に生の感情を綴るというのは、なかなか私には難しいので、等身大の感情を伸びやかに、かつ面白く書けるというのは、作者さんの持つ才能のひとつだと思います。
自分のことは自分では分からないものだとよく言いますが、あなたもちゃんとレグルスですよ!
最後に、長編エッセイの執筆おつかれさまでした。本当に面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。
創作を頑張る主人公の姿勢に、私も励まされた思いがします。
大学で文芸部に入部してから退部するまでの三年間を濃密に描いたエッセイ。
仲間たちとの出会い、先輩たちとのぶつかり合い、その果ての”革命”……まさに「激動」の文芸部ライフでした。胃をキリキリさせながら最後まで読みました。
自分が文芸部に所属していたとき、他の大学の文芸部の活動風景を知る機会なんてありませんでしたし、それが普通だと思っていました。他大学の活動を見学しに飛び込んでいく行動力……とても驚かされました。過去の自分に足りなかったもののひとつです。あと、あんな田舎までご足労いただき恐縮です。
合間合間に挟まれる小説は、それを書いた経緯や書いているときの心情、そして部内での評価まで赤裸々に記されていてびっくりしました。他人の小説の完成品を見ることはあっても、ここまで詳細に製作の背景を覗き見ることはそうありません。けっこう貴重だと思います。完結後二週間程度で非公開にされるとのことですが(もったいないな!と思います)、あそこだけでも「自分なりの小説の書き方」として別個に残しておけば、これから小説を書き始めようとする人の役に立ちそう……なんて思ったり。
登場人物たちの行動や台詞に存在するある種の非合理さが、これ以上ないほどのリアリティを生み出していました。こんな人いるな……とか、あんなこと思ったな……とか。自分が文芸部出身という贔屓目もありますが、共感という一点において、このエッセイは今まで読んだ中でも群を抜いていました。
リアリティがあるのは、エッセイならば当然のことかもしれません。しかし、現実に起こったことをエッセイに落とし込むのは案外難しいものですよね。三年分の記憶と記録の積み重ね、その膨大な情報量からエッセイとして適した部分だけを抜き出して再構成していく……誇張してフィクション風に書くでもなく、事実だけを淡々と述べるでもなく、しかしエッセイとしての読みやすさと面白さは失わないように。そこに確かな技量が窺えました。
あれこれ並べ立てましたが、純粋に面白かったです。
ありがとうございました。
学生時代の文芸部を振り返る作品として上梓された本作は、筆者の恐怖と葛藤と戦意とが荒々しく表現されている。
拝読しながら、私も高校時代の自分を思い出し、気恥ずかしさと共に青年期に持っていた自分の姿が蘇ってきた。
それは摩耗した今の自分から見れば笑い話である。
しかし、悔しさを握りしめ過ぎて歳を取った私の目には、宵闇に咲く花火のように鮮やかで羨望として映るものである。
誰しもが通る道であるだけに心へすとんと収まるのだが、それはそうした心情を活写できる筆者の技量に裏打ちされている。
それと同時に、個人的にはこれをもう十年先に見詰め直した作品を読んでみたいという興味からレビューを書かせていただいた。
社会の中で磨かれた原石の輝きを見たいというのは、あまりに業が深すぎるかもしれないが、そうした我儘を行いたくなるのが本作の良さである。