胃薬片手に過去を偲ぼう

 大学で文芸部に入部してから退部するまでの三年間を濃密に描いたエッセイ。
 仲間たちとの出会い、先輩たちとのぶつかり合い、その果ての”革命”……まさに「激動」の文芸部ライフでした。胃をキリキリさせながら最後まで読みました。

 自分が文芸部に所属していたとき、他の大学の文芸部の活動風景を知る機会なんてありませんでしたし、それが普通だと思っていました。他大学の活動を見学しに飛び込んでいく行動力……とても驚かされました。過去の自分に足りなかったもののひとつです。あと、あんな田舎までご足労いただき恐縮です。

 合間合間に挟まれる小説は、それを書いた経緯や書いているときの心情、そして部内での評価まで赤裸々に記されていてびっくりしました。他人の小説の完成品を見ることはあっても、ここまで詳細に製作の背景を覗き見ることはそうありません。けっこう貴重だと思います。完結後二週間程度で非公開にされるとのことですが(もったいないな!と思います)、あそこだけでも「自分なりの小説の書き方」として別個に残しておけば、これから小説を書き始めようとする人の役に立ちそう……なんて思ったり。

 登場人物たちの行動や台詞に存在するある種の非合理さが、これ以上ないほどのリアリティを生み出していました。こんな人いるな……とか、あんなこと思ったな……とか。自分が文芸部出身という贔屓目もありますが、共感という一点において、このエッセイは今まで読んだ中でも群を抜いていました。
 リアリティがあるのは、エッセイならば当然のことかもしれません。しかし、現実に起こったことをエッセイに落とし込むのは案外難しいものですよね。三年分の記憶と記録の積み重ね、その膨大な情報量からエッセイとして適した部分だけを抜き出して再構成していく……誇張してフィクション風に書くでもなく、事実だけを淡々と述べるでもなく、しかしエッセイとしての読みやすさと面白さは失わないように。そこに確かな技量が窺えました。

 あれこれ並べ立てましたが、純粋に面白かったです。
 ありがとうございました。

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