1話完結でサクサク読める短編集。
現在75話投稿されているなんとその全てが、トイレにまつわるお話です。
コメディ、ヒューマンドラマ、恋愛、ミステリー。
時に笑え、時にほろりとし、時に辛辣。
これほどまでに多種多様なトイレの物語を綴る作者さまの発想と引き出しの多さには、脱帽せざるを得ません。
基本的にはそれぞれが独立したお話ですが、中には登場人物や出来事などがリンクしているエピソードもあり、初めから順に読んでいく楽しさもあります。
さぁあなたも、スマホを持ってトイレに行きましょう! きっと読書が進んでトイレから出られなくなること請け合い!
まぁ私は居間で読みましたが。
だってね、よくよく考えてみたらですね、止まらないんですもん、読むの。
違うんですよ?
そんなそんな出られないほどの腹痛に襲われてるんじゃないんですよ?
違うんですって。
面白いの読んでるだけなんですって!
――ね?
危険です。
あと、うるっと来た時に(これがまたそういう話もあるんですよモー)拭くものがよりによって水に溶けやすいやつしかない、っていうね。
もう一度言いますよ。
危険です。
危険なんです。
ちゃんと用を足したらすっぱり読むのを止められる、という強い意思をお持ちの方、
それから、箱ティッシュとそれなりの量を捨てられるゴミ箱を準備出来ているという方のみ、トイレでお読みください。
――私?
私はもちろん部屋で読みますとも。
キーワードは『トイレ』ここで綴られているお話には、毎回必ずどこかにトイレが出てきます。
トイレで事件が起きたり、トイレで考え事をしたり。トイレというテーマで、よくここまで多くの話が書けるなと感心しました。
切ない話もあれば、クスッと笑える話もあります。一話一話が独立しているので、気になったタイトルをポチっと押すだけで、前後を気にせず気軽に読むことが出来るのも、この作品の良い所です。
ただ一見何の繫がりも無いこれらの話でも、よくよく読んでみればどこかでつながっているのですよ。読んでいると「アレ、この人この前の話で出てきてたよね」と思うような事も多々あります。
一話目から順番に読んでいくも良し、気になったタイトルから順番に読んでいくも良し。楽しみ方は自由です。
この不思議の魅力が詰まったトイレのお話達を、ぜひご堪能下さい。
トイレをテーマにした作品集です。
注目すべき点はトイレを題材にしながらも、一つ一つの物語が恐ろしいほど洗練された内容になっている事です。
人物描写は勿論ですが背景や世界観がしっかりと書き込まれ、短い文章で表現される技術は類稀な才能と言わざる得ません。無駄なく簡潔な文章力は感動的なお話から笑えるストーリー。深く考えさせる物語と作者さまの幅の広い表現力や思考に圧倒されるでしょう。
奇抜な設定やファンタジーな側面に頼る事なく、日常の中で大切な部分に着目する確かな観察力。そして、人物の一人一人の人生ドラマが活き活きと描かれた作品集です。
エンターテイメントの類としてSFな設定はありますが、それさえもリアルな未来を描いている感覚は拭えません。もし、あったら。もし、存在していれば……。そんな近未来な出来事から、身近にある問題を取り上げサラリとトイレに繋げていく様は魔術師のようにさえ思えました。
読み進めていく内に過去の登場人物が出てきたりと、トイレを通じて物語は繋がっていきます。どのキャラクターがどこでスピンオフするか分からない面白さ。ヒューマンドラマが作者さまの紡ぐ物語には欠かせない魅力でした。
どこまでも、いつまでも読んでいたい作品。
そして、いつまでも感想を書いていられる作品。
それほど素晴らしく完成された物語です。
一つ一つのエピソードは読みやすく読後感もありますので、試しに読んでみては如何でしょうか?
損はしない一級品の小説でございます。
どうか、一読あれ。
少しずつ、少しずつ読んでいました。
トイレ…
嫌なイメージしかなかったのですが、トイレをなんだが大切に思えるようになってきたのは、この小説のお陰です。
トイレが楽しい。
トイレが愛しい。
トイレがすごい。
どこまでいってもトイレ賛辞に付きますが、最後の星空トイレで、ふとあるアニメを思い出しました。男の子向けの、宇宙で戦い続ける筋肉のアレ。
宇宙船が確か…でしたよね。あれがびゅーんと飛んで、次々と敵を倒して仲間が増えていくんですよね。プロレスなのに。
トイレには元気とパワーが込められているのでしょう。
私の専門で言えば、トイレに鏡を置くと、福の神がお立ち寄りになる。
トイレでしょ?
ええ、トイレです。でも、この作者が最後に締めました通り、いろいろなトイレがあります。
まるで、人。人の数だけトイレはある。
作者に聞きたいです。トイレとは何?
答えは、このトイレ小説に。皆さんもトイレが可愛く思えたりするかも知れません。価値観を揺さぶられる作品でした。
うん、トイレを大切にすれば、きっといいことあるんじゃない?