地球人にこそオススメしたい一作

 はじめに宇宙が創造されたときは、多くの人がたいへん立腹しました。よけいなことをしてくれたというのがおおかたの意見で、かくいう私もその言説に賛同する一人でした。
 しかしその宇宙の、星図にも載っていない辺鄙な宙域のはるか奥地、銀河の西の渦状腕の地味な端っこにある小さな太陽系の第三惑星の、三割しかない陸地の上でダグラス・アダムズが生まれ、銀河ヒッチハイク・ガイドが生まれ、それが映画になり、翻訳され、そして時を経てSFコメディの血統を受け継いだこのメロンスター・シリーズが生まれたことを考えると、必ずしもよけいなことではなかったのかもしれません。
 メロンスター社に勤める会社員セン・ペルの平凡で劇的な日常が、次元を超えてどれだけの地球人を楽しませてきたのでしょう。犠牲になったゴムのアヒルちゃんにどれだけの地球人が涙したことでしょう。我々がそれをセンに伝える術はないけれど、きっと彼女はそれでもなんとかかんとかやっていくことでしょう。頼れるエリアマネージャーもかわいいシュレッダーロボットも――もちろんコノシメイも――いることですし。
 もう一度、自作のアップルパイを片手に読み直そうと思います。使ったリンゴがベニイロリンゴモドキではないと断言することは誰にもできないけれど、きっと、アップルパイの味なんて気にならないぐらいこの宇宙へと引き込まれてしまうでしょうから。

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