孤高の魂に足りないものは?

偉大な王。その息子兄弟の兄である『俺』は、はっきりとそう語ります。
父親がなぜ自分を疎むのか、『俺』には柔弱で無能に思える弟ばかりを持ち上げるのはなぜなのか。
分からないまま。満足に知ろうともしないまま、『俺』は父と弟を見限ります。

世の常に従い、自身が王となるとき。『俺』は不満を募らせ、やがて爆発させました。
気に入らない。
気に入らない。
気に入らない。
あれこれ考えはするものの、『俺』の答えはどれもそうです。

手当たり次第、なにもかもを手に入れた時。『俺』はどうやってそこへ辿り着いたか、知っていました。
ようやく、本当に欲しいものを手に入れたのか。それとも今までと同じに、一時的な欲求に過ぎないのか。

その答えは、誰にも分かりません。きっと『俺』自身にも。
ずっと、ずっと。『俺』は求め続けました。それはきっと本当は寂しくて、誰かから愛を与えてほしかった?

……いいえ。
きっと『俺』が求めたものは違います。産まれてくる跡継ぎが、彼の鏡でなければいい。
そう願ってやまない、重苦しくも切ないお話でした。

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