血濡れの冠を戴く者たち、そのまなざしの先にあるものは

王位を巡る運命に翻弄された男の一生。端正な文体が何より雄弁に物悲しさを語るようです。
穏やかな弟王子より、冷酷な兄王子こそが支配者の気質を備えていて、玉座に就いたのも然るべくてという印象があったのですが……ひと筋の光、変化の兆しを見出した直後の、まさかの結末にやるせなさがあふれました。
歪んだかたちではあったかもしれないけれど、彼が最後に掴みかけたものは愛だったのだと思います。
因果の物語なのでしょうか。淡々とした語り口ながらも、重く響く余韻の残る作品でした。

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