概要
私たちは夏の七日間だけ、一緒に静かな工房でアクセサリーを作る。
夏の暑さと、仕事への誠実さと、お茶を飲むひととき。
変わるもの、変わらないもの、そこにあるもの。
それらが織りなす、たった七日間の物語。
※2022/7/29 改稿
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!蝉と、アクセサリーと、僅かな時間と。長くて儚い七日間が、夏に巡ります。
ハンドメイドアクセサリー工房の先生と、弟子入り主人公(私)が作品作りを通じて、ありふれた時間と思い出を形成していく7日間を描いた中編の物語。装飾品のように夏の日を彩るクワガタやトンボといった虫のキーワード、合間に挿入されるコーヒーブレイク……からの、茶を嗜む。この『暑気を包んだ工程感』が魅力で、二人の近い距離感もスワイプする指から読み取れます。
タイトルにもあるように『蝉』をテーマだけでなくキャラ付けにも絡めて、二人の日々は過ぎていく。一話はだいたい5000文字くらいのボリュームで、日常を切り取るには悠長だけど、過ぎてしまえばあっという間に思える、この『一日』という刹那を1ページで感じさせ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!読み終えて感じた余韻は盛夏に樹々をそよがせる風のように心を吹き抜ける
蝉頭のアクセサリー職人を先生と呼ぶ、弟子の女性が主人公です。
一緒に仕事をするのは1年のうち、わずか七日間のみ。
主人公が先生に寄せる想いは抑えたもので、まず一番に感じたのは尊敬の念でした。
尊敬しているがゆえに、そして一緒に過ごす七日間を大切にしているがゆえに詰められない距離。
小さなアクセサリーの描写や、それを形作ってゆく過程が細やかで、そこに主人公の想いが込められているように感じました。
是非、読んでみて下さい。
そして盛夏に樹々をそよがせる風のような余韻を、あなたも感じてみてください。
そうすれば、このお話しは、あなたの大切な物語りの一つになると思います。 - ★★★ Excellent!!!彼女は今年も蝉頭の先生を待つ──廻り来たる、夏の7日間の美しい物語
自分の稚拙な言葉で表すのも惜しい。
そう思わされるほどに、美しく。
無意識的に「無常」に恐れを抱いている私たち「人間」の胸に深くも柔く刺さる。
本当に神秘的で、素敵な作品でした。
変わらないものはこの世にひとつとしてありません。
家族や友人、恩人、苦手なあの人。
そして、愛した人。
己以外の他の存在である、「彼ら」が果たして明日も同じ「彼ら」であるのか。
そして、自分自身。明日も「同じ自分」で在り続けられるのか。
そんなことを考えさせられるほど、この物語は深みのある作品です。
この作品との出会いより、自身の中にある
「無常」への無意識的な恐怖を改めて思い知らされました。
しかし、この…続きを読む - ★★ Very Good!!わかっていても、先が読みたい。
Twitterから参りました。まず先生の外見のインパクトでかなり意識をもっていかれます。そういえばアレをまじまじ見たことないけど口元どうだったっけ?と真面目に考えてしまいました。
主人公が仕事熱心で勉強を欠かさないタイプなので、好感を持って読み進めることができました。アクセサリーの描写も丁寧で、こんなに凝って作ってるものが現実にあったらほしいな~と思います。これがずらっと並んでいる様子は、漫画やアニメなどの映像で見たくなりますね。
最初から明示されていることではあったのですが、最後のシーンはやはり切なくなりますね。短命だからこそ美しい、別れがあって意味がある、そう分かっていてもやり切れな…続きを読む - ★★★ Excellent!!!うつせみの世を生きるもののあわいにうまれたそれは愛と呼ぶに相応しい
朝起きて、ふと思うことがあります。
昨日の私と今日の私とは、同じ「私」なのだろうか、と。
ありきたりな問いであるだけに、誰もが一度は思ったことがあるでしょう。
では、もう一歩進めて。
朝起きて一番はじめに私が、おはよう、という「その人」が、昨日と同じ「その人」だといえる根拠はどこにあるのでしょう。
この小説は、その問いに対する答えのひとつだと思います。
私も「その人」も、意外に不連続なものです。
「私」は毎日のように眠りによって連続性を断ち切られます。
私と「その人」が会わない間に「その人」は絶えず変化し続けているので、以前会った「その人」と今目の前にいる「その人」は、同一ではあり得ま…続きを読む