第20話 シャルムと申します

バハムートが嫌な言葉を残し消えていった


「……何だったんだろう…兄者に報告と兄者の安否確認!!」


ヴェルデは走り出す




______


同刻


「わっちは主さんが嫌いでありんす……!」


ビシッとこちらに指を指してくる


「……はあ」


大きな黒い蜘蛛の形をした椅子に座った和服の女性…口元には鋭い牙が2つ覗いている


というか先程からこの方…同じことしか言わない


「低級のくせに…わっちの方が強いでありんす!!」


駄々をこねる子供のよう…


「あの…私を引き抜きに来たのでは…?」


アラクネの方は少し前のめりになる


「本当は主さんを引き抜きなんぞしとうありんせん!!」


じゃあ何をしにここにきなんですか……?


足止め……かしら…?


だとしたら クロエ様の身が危ない…


一応色々なことを考える


「わっちは……わっち……わっ」


前のめりになりすぎて椅子からずり落ち、慌てて立ち上がる


…………あ、私より背が低い…


私が175…、となると155位かしら?


……そういえば蜘蛛って


「あぁ…あなた、男性なんですね」


「……っ!!」


カアッと綺麗に化粧された顔に怒りがこもる


「蜘蛛で身体が小さいとなると…違いますか?」


「違わないでありんす!!」


悪いか!?と言いたげな顔…


「ごめんなさい、私…魔族のことにも疎くて…その格好に意味があるのかと思いまして」


「……はア?…わっちは…女になりたいだけでありんすっ!!」


主さんみたいにスラッと背が高くなりたい!!


「私にも嫉妬される部分があったとは…驚きました!」


「キーーッ!余裕でありんすね!…アラクネ族でわっちは何も出来ない厄介者…同じく何も出来ないのに認められる主さんみたいな魔族が羨ましい!あ、憎たらしい!」


私って変なのかしら

この敵意…全然効かない


それよりも


「厄介者なら私も同じ…と言うか私は純粋な魔族でなく元人間ですよ」


「……は?」


ニンゲン?ってあの人間?


「私……呪われているんです」


「人間が…魔族に…ありえないでありんす!」


ふーっふーっと息を荒らげるアラクネ


「それが有り得るんです……」



呪いとはそれほどまでに強いのですよ






_______




約30年前私は秋の都の端の村で育ちました



その村は不思議なことにカエル顔の不細工しかいませんでした



昔は美男美女が多いと有名で栄えていたのですが…魔女に呪われてしまったのです


魔女は村の人々の美しさに嫉妬し100年もの間呪い続けました


呪いの結果…村の人々はラミアとなり狂いました…一部は魔族として討伐されてしまったり、自害したりと散々……


影響が少なかったものは醜くなり


意識を保った者は魔族として生きることを決めました


魔女の呪いは生まれてくる子にもかかり男も女もカエル顔の子どもばかり生まれるようになりました


ですが村の人々は安堵します


『美人が生まれたら化け物になる』


『逃げても呪いからは逃げられない…ならば化け物が生まれないことを願うしかない…』


そんな呪いが根付く村に私は生まれました


記憶にある母の言葉は


『なんて…恐ろしい顔なの』


でした

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