第11話 知らないなら

「とりあえずフェンリルを呼び戻すか」


フェンリルがいないとフローラが話を聞いてくれないかもしれない


「すぅっフェッ」


「なんスか!!?」


軽々と塀を越えて走ってくるフェンリル


君の名前はフェッなのかの?


「まあいいんじゃが…フェンリル、フローラの元へ行くぞ〜」


フェンリルの肩がビクンと跳ねる


「……えっ、なんか俺やらかしたッスか?」


頭の大きな耳がペタンと倒れているが……


「フローラと話をするのにそばにいて欲しいんじゃ…なにかとその方がいい気がしてな」


「なるほど…わかったッス…この身捧げるッス!!」


捨てられた子犬みたいな目をしているが……本当に分かっておるのか…?


フローラに取り込まれるとでも思っているのかの……?


はっ…!どれだけ恐れているのか…それをワシは知らずに…


「ううっ…帰ったら好きなものを食べていいよ」


優しくせねば……!


「あー、最後の晩餐……」


「これ、やめんかケイト」


「やっぱり俺お役御免スか?!」




_____



__


「フローラ!」


城近くの大木の元に行くと……


「おぇええええ」


……!?


「ど、どうした!?」


美人が嘔吐している…


「……はあはあ、大体の話は分かっているわ…うぇ」


「ど、どういうことだ…?」


「私…見ていたから…できうる限りの木に意識を飛ばして……フェンリルくんの勇姿を!!」


……なるほど?

木に意識を飛ばせたのか……


「そこは置いておいて、そのおかげで香水の匂いにやられているのよ…げろげろ」


「大変じゃな…」


あ、あと


「こっちが重要…見たわよ、香水ぶちまけてる憎たらしい鳥!」


「おお!凄いぞフローラ!」


腰に手を当てふっふーんと笑う


「伊達にこの森の守護やってないわよ」


「森の守護者だったのか…」


「そ、私この森の管理する為に仲間と離れてひとりぼっちで頑張っているの」


私結構有能みたいで?

一人でもやっていけるだろうって…

仲間はみんな北に行っちゃったし

正直いって楽しくありません!!


「北……精霊の住む場所か……」


「そうね…あ、そこに昔いたんだっけクー・シーくんは」


「ええまぁ……」


嫌な記憶だったのか目をそらす


「はあ…ワシは何も知らないな」


しゅんとしていると


「仕方ありません…我が主はまだ、魔族の全てを学び終わっていないのですから」


影からフォローが入る


確かに…魔王になってからも色々とバタバタしていて知らないことの方が多いかもしれない


「知らないなら聞けばいいんだぞ、聞くは一瞬の恥…聞かぬは一生の恥って言うでしょ?」


「確かに…」


一瞬の恥…

一瞬ならば恥ともとれまい



「……話が逸れてしまったわね」


「いや、いいんだ」


「私が見たのは2人の鳥の魔族…2人は、方角からして西の上級魔族の住処の方へ飛んで行ったわ」


西……?


「その魔族は上級……?」


「私が見た限りでは下級だったわ。下の上くらい……なのに」


どうして上級の住処なんかに……


「……糸を引いている者がそこにいるのか」

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