第7話 魔王のお仕事
魔王城、庭
「…ん?…この匂いはなんだ…?」
誘い込まれるようにフラフラと匂いのする方へ歩みを進める…
「……女?!」
ニヤリと笑う顔
「うわぁぁあ!!!」
______
魔王の仕事ってどんなことをするのか
それを全く知らなかったワシは
てっきり、悪逆の限りを尽くしていると思っていた
魔王だし?いつも人を攫ったりしているものだと……
…本当のところはどうだ
「書類仕事…ばかり!!」
「どうしました兄者!!?うわっ!」
足を滑らせ書類に埋まるヴェルデ
と言うかワシも埋まっている…
「人間以外もこんなことするのかぁ……」
ペラペラ、と書類に目を通していく…漫画の王様より仕事している気がするぞ…
「えー…と?至急解決されたし…城の庭の木について…?」
「あ!それはですねドライアドと言う木の精霊が気に入った男を木に取り込んでいるそうで…」
木に……?
「先々代から問題視されていた案件らしく…」
先々代でも解決出来なかったのか…?
「…え……取り込まれた者はまさか……」
「いえ、死んではいないと思うのですが…行方不明になっています」
なるほど…
「…家族はどうなる?…そして、助ける方法は…?」
「家族は長年この問題を抱えてきた最年長の執事が責任感じ記憶を消しています」
あとは…えーっと
「作戦としては…兄者の美貌で…」
……ごにょごにょ
「美貌ーー?」
_____
ドライアドのフローラ
長年この場所で城を見守っているらしい
…のだが…見守る者が誘拐とは…
そして、ヴェルデの言っていた作戦とは
「兄者の美貌でメロメロ大作戦〜!」
「はあ…作戦とはこれか…」
……無理じゃろーなーー
当の本人フローラの反応は……
「イケメンだけど好みじゃないわ」
フローラの好みはムキムキらしい
「ほらぁ」
ワシ細いからの〜
「キィーーーー!!燃やしてくれる!!!」
なぜ ヴェルデが泣きながら怒るんじゃ
「これこれ、やめんか……あ、そんなことよりフローラ」
「そんなことより!!?」
そ、そんなことじゃ無いのに…
「何かしら?」
しゅんとしているヴェルデを置いて話を続ける
「取り込んだ者たちを解放して貰えんかの?」
「……なぜ?」
なぜと言われたら…
「囚われた皆が可哀想…と言いたいが、解決できないとワシが困るから」
フローラは目を白黒させる
「あら、素直…!んー、解放してあげたいのは山々なのよ?でもねぇ…私また、寂しくなっちゃう…寂しいわぁ…」
「寂しい…か」
確かにこの場所でずっと1人は寂しいな…
「では、毎日話しをしてくれる魔族を探そう。それならどうかな?」
「…あら、いいの?そんな暇で私好みの子いるのかしら?」
「1人心当たりがある…少し待っていてくれないか?」
1時間後…
「……遅いわね…騙された…?」
あんな優男の言うことを聞くべきじゃなかったかしら
すると、遠くから声が聞こえる
「おおーーい!待たせたの!」
「遅いじゃない、ただでさえ暇なのに…待ちくたびれたわ。…で?どんな子なの?」
ずりずり引きずっている白い物が見えるが…
あえて触れない
「……フェンリル起きろ!兄者の前だぞ!!」
『ああ゛?……あー起きた起きた』
ムクリと起き上がる白い物体
「……白くて大きな…狼?」
首輪の着いた狼……人型じゃ無いし
なにこれ…全然私の好みじゃないし話し相手にもならないじゃない!
それに、むしろ私に害をなしそうな生物!
「人の姿を取りなさい!」
ヴェルデに命令され
『ハイハイ』
と、渋々返事をする
そして、ぶわっと姿が変わる
「!!?」
すぐにフローラの目が輝く
な、なによ!!この鍛え抜かれた身体!!
白髪にハチミツ色の目…美しい!
「はあはあ…こんなの見た事なぁい」
フローラの鼻息が凄い
それに対してフェンリルは不機嫌だ
「フェンリル」
「はぁ」
溜息のような返事
「これからは頼むぞ〜」
……は?!
「これから!?ずっとこんな奴の相手するんスか!?」
「うん、お話するだけ。それに仕事なくて困っていたのは君じゃろ?」
「そうっスけど!!クロエ様!!?」
フェンリル…
「別の仕事の時には呼ぶから!!」
「オンブル!な、何か言ってくれよ!」
影からオンブルが顔だけ出す
「健闘を祈る…働かざる者食うべからず…だ」
これは、クロエ様のお言葉です
「そんなぁぁぁ!!」
「お話しましょぉぉ」
孫のおさむに見せられたホラー映画を思い出すような引きずられ方をしてるなぁ…
「悪いことしたかなぁ…」
「大丈夫ですよ。彼、強いですから!!」
謎の信頼…安心は出来んよ??
『城の庭の木について』
『血の気の多いフェンリル』
このふたつの案件
同時に解決!!
「1000年に1度生まれるか生まれないかの逸材…流石でございます!!!」
次の問題も解決して下さる事でしょう…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます