第6話 許すことは無い

気が遠くなるほど昔…


3人の魔族の長がおりました


3人の長は悩みを持っていました


1つ、魔族が人間に虐げられていること


2つ、魔族がバラバラで魔族同士で争っていること


3つ、貧しいこと



そして3人は考えました


そうして出た答えが


1人の魔族の王を作ろう!



しかし、ここで問題が起きたのです


3人が3人とも「自分が王にふさわしい」と言い張るのです



そして、魔族内で戦争がおきてしまいました



関係の無い魔族も傷つき 皆、絶望してしまいました


そこに現れたのが初代魔王となる男



クロム・アーテル・エーデルシュタインだったのです



_______


「そして…初代魔王により魔族に平和が訪れたのでした」




「よく聞かされた祖父の武勇伝か」


どうやって平和になったのかが書かれていないが…まあ、昔話ならこんなものか


「凄いですよねぇ!こんなにいっぱいの魔族をまとめ上げるなんて」


「確かに、多種多様な魔族をまとめるなんて凄いことじゃな…その祖父と父のおかげでワシはお飾りの魔王じゃな」


本気で思っているが…

視界の端にワナワナとふるえるヴェルデが見える…


…少し意地悪を言ってしまったか?


ちらりとヴェルデを見ると


「え??兄者が飾り??そんなわけないでしょう!!?兄者の優しさや強さに触れれば皆涙を流しますよ!!」


「…うん?」


早口すぎて聞き取れなかった


「怒っているのか?」


「怒っていませんとも!!」


フンっと鼻を鳴らしているが…本当に怒っているわけではなさそうだ


「……そういえば…人間と魔族の関係を昔話で語られていなかったな…」


「確かに、人間に魔族は虐げられていた…くらいしかありませんね」


虐げられていた……か



少しだけ不思議だった

昔から漫画で読んでいたものは魔族=敵…だったからのぅ…


殆どの魔族たちはこんな少し不気味な姿など気にしていない


なぜ 多種多様の姿かたちの魔族が人間と上手くいかなかったのか…



それは何故か…



……


「……あ。」


「兄者?どうなさったんですか?」


「そういえば人間は変わり者を好まないんだったか……」


「??」


そもそも人間は異形の存在を嫌う


人に近い姿…例えばエルフ、ドワーフなどに対してはあまり嫌悪感を抱かない…


ドワーフは手先が器用で人のためになるから…かもしれないが



だが少し人から逸れた姿だったら?もしも、自分たちより強い力を持っていたら……



人間は少しでも人と違うことをすれば直ぐに〝異端〟だと言う


力だけでなく頭脳で解決しようとするものに対してもだ…


姿が少し違うだけで争いが起きる……


魔族もそういうとこあるか…



でもまぁ、人間って……面倒くさい







まあ!ワシも!元人間なんだけれども!!


……だからか分かる…魔族は恐ろしい…殺らなければ殺られる……


『あんな化け物共と話なんてできるわけが無い』


「……っ」


少しの頭痛……と遠い遠い記憶


「兄者…!!?」


…懐かしい記憶だな…


「ヴェルデ!」


「はい!」


「兵隊さんの話をしよう!」


「わあ!久々ですね!」


ワシも結局人間であるから


自分の行動を認めてもらわなければ落ち着けない


でも、例え誰かに認められ全てが許されたとして


ワシはワシ自身を許すことはないだろう

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