第5話 魔王襲名式

「クロエ様」


「おお、シャルム」


シャルム、そう呼ばれたメイド服を着た女性は両目がある位置から角が生えていて血のような液体がどろりと垂れていた


「今日も美しいな」


「……そんな…こんな私に…もったいないお言葉です」


照れている…シャルムはラミア族であり人間離れしているがとても心優しい女性である


……ワシに対して


「あ!こらシャルム!兄者の身の回りはこの僕、ヴェルデがやると言っているでしょう!」


「遅いご起床ですね、あまりに遅いので魔王襲名式の準備はとうに終わっていますよ」


「な、なにおう!!」


バチバチじゃ


「やめんか、ワシが悲しくなる」


「ごめんなさい!!」

「申し訳ございません」



魔王襲名…か、


どんな、苦行なのか……



「……では、行くか」


「はっ」



この儀式には魔族のほとんどが参加するらしい



それは何故か



「クロエ様ーーー!!」


「きゃーーー!!!」



新しい魔王の姿を見に来るものがほとんどらしい……が


値踏みするような視線も感じるな…


「女性が多いですね」


「兄者は性格も顔もいいですからね!」


感覚的には生まれたばかりの時と変わらんのじゃが…


王族の子供が生まれた時……の様な


今のワシ一応王族か…!




「凄まじい魔力量だわぁ!」


「オレたちは遠く及ばないな!!」


因みに、下級の魔族の魔力はこの世界の人間の2倍程である


しかし、魔王ともなると数百倍、数千倍になる



ので、


少し力むだけで魔力が漏れる、…屁とかではないぞ?



…儀式は魔法陣の中で行われる


「これより魔王の座を継承します」



わああああ…!



血みどろの禍々しいものかと思っていたが…


…ただの儀式…



だけども、力が湧いてくる気がする



そうだ…魔王になったら皆に言わなければいけないことがあったのだ





「……皆の者、ワシがクロエ・アーテル・エーデルシュタインじゃ」


いえた!!…では無く


「ワシが魔王になったことで伝えねばならん事がある」


それは


「ワシは………争いを止め。魔族界の英雄となる!!」



皆は目をパチクリさせる


…変な事言ったか……?あ、魔族なのに英雄という言葉がまずかったか…


「うぉぉおおおおお!!」


全員が湧く


……ほっ


「勇者は!勇者は殺すんですか!!?」



ああ、


「……勇者は捕らえてくれるか」


捕らえる??


「……なぜ!?」


「……ワシに喧嘩を売ったのだ、ワシが対処せねばな」


ゾクッ…


勇者側が悪くなければ話し合い…となるし



「ともかく!ワシは皆の平穏を望む!良いな?」



わああああ!!



「……ちっ能天気どもめ…」



…………



「……緊張したぞぉ!」


あんな量の人前に出ることは無かったからな


「お疲れ様でした!!」


儀式のせいかどっと疲れが


「クロエ様のお好きな魔界で採れた茶葉で作った魔界茶でございます」


「ありがとう シャルム…そうじゃ、オンブルは……」



「いつも通りずっと、クロエ様の影の中に…」



「……オンブル出てこい」


ワシの影がゆらりと動く


「どうなさいました我が主」


ズズッと影から現れたのはアシンメトリーでショートの黒髪で右目を隠した黒のロングコートをきたフォーマルな男性


「許せ、1回は顔を見ておかんと落ち着かんのじゃ」


オンブルはクー・シー族でボディガードの様な存在でいつもワシの影の中にいる


守ってもらっているのだ 顔は見ておかんとな

いない時に1人で喋る訳にもいかんし


「私はいつでも我が主のそばに」


頼もしい…


口数が少ないが……

……尻尾がなぁ見えておるんじゃよなぁ



ブンブン


わかりやすい…


「生き物飼いたいのぅ…」



「生き物……家畜ですか??」


「違うぞ??愛玩動物…例えば犬…」


あーー!


「魔界の犬は色んな技覚えますからね〜」


魔界の犬…?


『ガルァァァ』


アレ、化け物じゃが!?


「おすわりとか…するのか?」


それは少しみたい…


「火をふいたり…邪魔な奴の首を取ってきますよ!」



「……ひえっ」


全然可愛くない……!



魔界……未だになれず

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