第4話 落ち着かなければ

「父上が……!?」


「…ああ、なんと……」


なんという最悪の運命なんだ


「母上の命日に父上が…」


結構ちゃんとした志を持った魔王だと思っていたんじゃがなぁ


ガシガシと頭を掻く


「……で?どうして父上のような方が勇者に討たれたんじゃ?」


「今日は奥様の命日…外出はしない予定だったのですが…

低級魔族の居住区である東地区に敵が侵入したと報告があり…やむおえず確認に…そこで……」



待ち伏せをしていた勇者に……



「…父上が…そんな簡単に死ぬかのう?魔力感知できるだろう?」


人間にも少しは魔力が存在しているのだ…魔王である父上が気付かぬはずがない


「それが…召喚された勇者の1人に強力な魔力感知妨害を受けていたようで……うぅ」


召喚された勇者…うう、ワシがなりたかったやつ!


「…居住区の者は全滅したのですか?」


「いえ、1人だけ戻ってきまして…伝令役だと…」


……ほお?魔王討伐と関係の無い人を殺したのか…


「魔族と人間との全面戦争をする……と」


「……な…!!?」


「……。」


……また、無益な争いを生むのか…?


「どうしますか!クロエ様!!」


「そうだ…!父上がいなくなった今…当主になるのは兄者…あなたです!」



……そうさなぁ



__



ザワザワ、ザワザワ


-魔王軍中心地


「殺し合いか!!?」


「戦争だーーー!!!」


「民たちはどうなるのですか!?」


「人間なんぞ皆殺しだぁぁ!!」


皆取り乱しておるな…


「うわわ…どうしましょう兄者…兵士たちの怒りが爆発しそうです!」


「ヴェルデ、音声拡大魔法を」


「あ、はい!!」




キィーーーーーン


「…ごほん…まず、落ち着け。」


「あれは…次期当主クロエ・アーテル・エーデルシュタイン様…!」


ワシも言える自信ないのによく言えるね


「魔王様がやられたんです!黙っていられますか!!?」


「静かに!!」


ビリビリと空気がふるえる


「魔王の前にワシとヴェルデの父でもある…悲しまんはず無いだろう!……じゃがな…焦って無闇矢鱈に人里を襲うべきではない!!」


「な、なぜ!!?」


これは、人間の考え方なのかもしれんが


「悲しいことに恨みは繋がる…関係の無い人を襲えば新たに恨みを作り我々が襲われるのだ…そうしたらどうなる?」


え、……え?どうなる?


どうなる?


ざわつくだけで答えが出ない


「また我々が人を恨むのです!!」


ヴェルデが答える


「ですが!!仇をうたねば…報われません!」


そうじゃなぁ…


「…ならば、探さねばならんのぉ」



「探す?」



「……父を殺し、ワシらに〝全面戦争〟なんぞ言った輩の顔を拝まねばなるまいよ」


クロエ様のその顔にはハッキリと怒りが浮かんでいた


うおおおおお!!!


「だが!!関係の無い者は巻き込むな!それは、自分たちのためである事も忘れるな!」


見つけて…どうするかは、相手を見てからじゃな


自分の意思でやっているのか…それとも…騙されておるのか…


そもそも、不意打ちと言えど魔王を打ち倒す程の力があるんだ…気をつけねば


まあ、どちらにせよ…礼は返さぬとな



そんなことを考えているとヴェルデが前に乗り出して言う


「あ!!みなさーん!戦いの前に明日朝に兄者の魔王襲名がありますので参加してくださいね!!」


そんな重要なことを行事ごとみたいな感じで発表するな


はーーーい!!



「……みんな切り替えがエグいのぉ」


父上…あなたの志、ワシが少し受け継いでも良いのかの…

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