第8話 何者か
遠くから歌とハープの音が聞こえる…
ああ…心地よい歌声と音色だなぁ……
ヒュゥッ
一瞬、風を切る音が聞こえた気がした
「ぐえっ…!!」
________
ちゅんちゅん
朝…魔界とは言え清々しいものである
「……朝は夜と違う静けさがあって好きだ」
……とのんびり浸っていると…
「……だーー!無理無理!もう無理ッス!」
静かな城に響く声、シャルムのため息
「なんですか、フェンリル…2週間程度でもう音を上げるんですか?」
部屋に着くとヴェルデが両手を腰にあて
呆れた様な声を漏らす
視線の先にはドライアド、フローラの話をほぼ毎日聞いているフェンリルが不満を零している
「…だって!だってッスよ?!同じ話しかしないんスよあの人!2週間ずーっと。…長く生きたらああなるんスかね」
半べそかきながら訴えてくるフェンリルに対し
「……なるぞ?」
…と話を聞いていたクロエが悲しそうに一言
そして、ワシもそうだったしと心の中で呟く
「クロエ様!?」
「騒がしいと思えば…フェンリル、フローラの話はつまらないのか?」
「い、いえ…ためにはなるンスけど…こう何回も繰り返されると…面倒臭いというか」
なるほど…面倒臭い…か
ワシも孫に言われたなぁ…
「どうされました兄者…」
「大変です!!」
ヴェルデの言葉を遮り
バァンッと開け放たれる扉
「あ??ノックも無しに入ってくるなんて躾のなってない奴だな」
フェンリルの不機嫌な声に恐れながら扉の前に立つ魔族
「申し訳ありません…!!た、大変…なんです!!」
誰だ?見たことはあるが名前が…年かのぅ
フェンリルの気配に怯えておる…低級魔族か
「…フェンリルそれくらいで怒るな…で、どうしたんじゃ?あ、あと名を名乗って貰えると助かる」
「魔王さま!?し、失礼しました!!門番をしておりますガーゴイルのヤンと申します!」
元気でよろしい
「で、ヤン…大変な事とはなんですか?」
「それが…同じく門番をしているガーゴイルのユンが何者かに襲われた様なのです」
「襲われた…?門の前で?」
……
「…いえ、なぜか門の内側で倒れていました…」
それは…
「まさか、侵入されたのか…?」
険しい顔でヴェルデの方を見る
「ま、まだ他の者から何も報告がきていませんよ!?」
と、慌てた様子
となると…
「まだ侵入したばかりか…ヤンよ」
「はい!」
「いつ頃ユンが襲われたと気づいたのだ?」
「日が昇って…そう、日が昇ってすぐに悲鳴が聞こえました」
日が昇ってすぐに悲鳴…?目立たない夜とかではなく…?
「事故では無いんですか?」
確かに襲われただけとは限らないな…
「そんなはずはありません!翼が生えている我々が空から落下するはずが無いんです!」
「……なんと、それはおかしいな…」
いつも空を飛んでいる鳥が何も無いのに落ちる訳が無い
「…と言う事か」
「なるほど…確かに!流石兄者!……そうなると…誰に襲われたのでしょうか…?」
「……そうだ、オンブル、フェンリル」
鼻を貸してくれ
「ははっ!」
「え?鼻?」
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