第17話もう、どうしようもない

屋敷は恐ろしいほどの警備体制を敷いていました。まぁ、それに正面突破を図る僕もおかしいのですが、、、


「犬ですか」


先ず、先に僕を襲撃してきたのは番犬でした。ドーベルマンの様に黒い見た目で、一瞬のうちに見えた目は赤く血走り、犬特有の呼吸は皆等しく荒れています。


「薬物でも投与されましたか?」


クリスタルから刀を取り出し、喉元に食らい付こうとした犬に刀を突き刺しましたが、犬は怯えもせず、腹に突き刺さる刀を物ともしない様子で降りてきました。より深く刺さった影響で体内を貫通し、刃先は犬の背中から生えています。足で犬の体を抑え、一気に引き抜き、止めを刺しました。これなら犬も死んだ方がましと言うのもです。


「はぁ、まだ来ますよね」


もう2匹、今度は先程の犬よりも大きく、そして素早い動きを見せてきます。流石に避けきれる物でも無く、右腕が噛まれる不始末です。しかも、それなりの防御力を誇る黒衣を貫通して牙が腕に食い込み、激しい痛みが僕を襲いました。左腕でクリスタルからナイフを取り出して、噛みついた犬の頭を何度も突き刺して仕留めますが、利き腕が使えないという致命傷です。回復は早いのですが、それでもこの傷だと15分は再生に時間がかかり、それ時間は戦闘に支障をきたします。通常の人間ならば。


「邪魔です」


僕の身体はギフト、ウェポンマスターの能力で激しい強化を受けています。そして、更に

バイザーがある状態で、、、


「さて、もっと見せて下さいね」


敵のスキャンはすべて完了し、左手で刀を構え、最後の大犬の身体を横に切り裂きました。驚く程、綺麗に内臓なども斬れており、驚いています。


「この犬達はサンプルとして回収班を呼ぶのも良いかもしれません」


そして勿論、最後に現れたのは人ですね。犬の叫び声が続くなか、現れないはずがありません。


「人が大勢来ていますね。サニー、解りますか?」


「家の裏庭に20人以上です。全員武装していると思われます」


まぁ、当たり前でしょうか。これだけの事を可能な組織だ。薬物等で稼いでいるのでしょうし、、、


「あんちゃんだか、ねえちゃんだか知らねぇけどよ。ここが何処だか解ってっか?」


「さあて、何処でしょう?試験会場か何かでしょうか?上から新人研修の一貫でここを偵察しろと言われましてね」


「へぇ、、、何処か知らねぇが話しちゃくれないか?」


そう言ってハンドガンを僕の頭に向けてきます。他の方も銃を持っている8人は僕の体の何処かしらに向けています。迷いがなく、自然な動き。どうやら撃ちなれた方々らしいですね。


「まぁ、犬より弱いですから。問題有りませんか」


「あん?」


「死ぬのはそっちだよ。クズ」




「嘘!何、、、これ」


ドローンを使ってミッドナイトバロンの戦闘を私ことサニーは見ている。見ているけれども、解る。これは戦闘なんて生易しい物じゃない。ただの


「虐殺」


刀の動きは流石ウェポンマスターとしか言いようがない。肉体全てを武器と認識するなんて考えた事もなかったけれど、それの影響で

、、、弾丸を斬るのは解らなくはない。動体視力も異常で、身体能力の異常性も見に染みて理解している。


「サニー、、、はぁはぁはぁ、あいつは」


「レイ、まったく。サニー、バロンはどうしていますか?」


二人が同じ質問をするから、面倒になってパソコンの画面を見せた。


「止めろ、止めて!ぐぁ」


「ククックハハハヒヒヒ、後何人死にますか~♪」


まるで歌うように人を斬り殺して行くその姿は、正に死神だった。斬られたり、撃たれたりしているハズなのに、痛みを感じていないのか、敵をただ楽しそうに、光悦した表情で殺して行く。


「コレが、、、あの男なのか?」


「うぷっ」


レイはバロンの豹変ぶりに驚愕し、ローズは切り刻まれた肉片やこびりついた肉片を見て、吐いている。正直、こんな仕事をしてれば殺すこともあるけどここまで酷いのは初めて見た。


「止めに、、、行く?」


「行く頃には戦闘は終わるだろうが、私たちの任務はここの偵察だ。最後までしよう」


「えっえぇ、わたったわローズ。サニー、貴女は隠れてて。その足じゃあ足手まといだわ」


レイの言葉が刺さる。確かに、両足を折られて復元したばかりでの任務は速かった。でも、仲間のサポートはできる。


「私の変わりにカメラドローンを連れていって、それなら遠隔操作で皆のサポートができる」


「わかった、サニー。きつくいって悪かった」


レイは基本素直。さっきのも、心配の異種返しと考えられる。


「ん、任せた」


私は、元々サポーターだ。なら、最大限仲間をサポートするだけだ。




「おや、遅かったじゃないですか。サニーは連れてないですね、良い判断です。足の動きが悪いのでは、戦えても不利を背負っています。なら、最初から来ない方が良い」


「バロン、的確なご意見ありがとうございます。しかし、この惨状は何でしょうか?」


聞かれると思いましたが、まさかローズが真っ向から聞きに来るとは。最初の僕への辺り方からして、レイだと思ったのですが。


「言わば、暴走でしょうか。殺すことばかり考えていたらつい、惨殺してしまいました。銃が有れば、足や腕を撃ち抜く程度で終わらせられたのですが」


そう言って、回りの武器を拾います。ハンドガンのM1911、アサルトライフルのM16自動小銃、ショットガンのM870のショートバレル。それぞれ45ACP、5.56×45mmNATO弾、12ゲージ。日本支社に戻れば回収できますが、今はここで剥ぎ取っておきましょう。事実、僕はいま弾薬がまったく無いので。


「死体を漁るのですか?」


「弾薬が有りません。非殺傷弾は有りません。この際、殺人には目をつむって貰いますよ。まぁ、これだけの弾薬が有れば殺しはしません」


「、、、了解です。バロン」


「行きましょうか、薔薇の騎士殿、閃光の騎士どの」

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悪の秘密結社な兄と魔法少女な妹です。 shadow @shadowback

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