第6話妹、嫉妬する

「何で佐月君がいるのよ!」


「なんで希、お前がいなかったんだ!」


希先生とお兄ちゃんが言い争いをしています。それを私達は尻目に、他の先生方に状況説明をしていました。


「つまり、この不審者を捕られたのは榛名さん。佐月君なのですね?」


「はい、教頭先生。兄が私達を守ろうとして、、、」


教頭先生はお兄ちゃんと希先生がこの中学校に在学中からの知り合いらしいです。二人も頭の上がらない先生なのです。


「そうですか、怖かったですね。では話を、、、はぁ」


教頭先生は頭を抱えていました。私達も、うわぁと言った声しか出せません。


「せやぁ!」


「なっ!まだまだ!」


希先生がお兄ちゃんを背負い投げ、お兄ちゃんがそれを受け身で最小限のダメージにし希先生をコンクリートに打ち付ける。


「甘いわね!」


「あっ!」


コンクリートに打ち付けられた希先生は、その体制を利用してお兄ちゃんの足を倒して遠心力で起き上がって、、、物凄く高度な戦闘が行われている気がします。


「なんてね!」


ブリッジの要領で腕を使って体を起こすお兄ちゃんには、回りの先生や見物している同級生や後輩たちもおぉ!といった声をあげています。正直、恥ずかしいです。


「はぁ、はぁ、」


「はぁ、はぁ、」


二人そろって息が上がっていますし、もうすぐ終わりですね。だって、、、


「こらぁ!斎藤佐月さん!雨宮希さん!駄目じゃないですか!こんな所で!」


「え?南雲先輩?何故?」


「南雲会長!僕はあくまでも不審者を捕らえただけで!」


「静かに!第一、二人とも成人しているんです。中学校時代の様な行動は控えるべきだと思いますが違いますか?」


「はい!では、南雲会長、自分は警察と協力し、状況見聞及び説明に移らせて頂きたく、、、」


「駄目です。」


兄さんと希先生は南雲先生、にしかられています。南雲先生は南雲薫。希先生と同じ女性教師でお説教が長いと評判の先生です。お兄ちゃんは生徒会に所属していた時の生徒会長と言う事もあり、いまだに会長と呼んでいるみたいですね。


「なら、南雲会長。これを」


「これは、、、懐かしいですね。在学中に結局使われなかった私に何でも1つだけ命令できる権利」


「南雲会長、今でも有効ですか?」


「えっ?佐月君?!」


「ちょっと、佐月!流石におかしいでしょ!」


「お兄ちゃん!そう言うのは、、、」


主に男子の面々がお兄ちゃんに激しい憎悪を向けていますが、大抵が断念しています。お兄ちゃん、イケメンで家事全般可能、運動神経抜群と女子受けする要素は兼ね備えているので。しかし、南雲先生、なぜ頬を赤らめているんですか?


「いや、料理をご馳走しようかと思いまして、少しご免なさい」


お兄ちゃんはそう言うと、南雲先生の顔や瞳を確認し始めました。


「やっぱり、南雲会長は何時も頑張り過ぎなんですよ。何時も通り、リフレッシュして下さいね、会長」


何が何時も通りなのか、物凄く南雲先生を問い詰めたい。その思いを一心に向けた視線を向けていると、望さんが肩を叩いて来ました。


「なーちゃん、ブラコンは大概にね。」


「ちっ、違います!」


「望ちゃんと七海ちゃん。二人も来るかい?元々料理する予定だったし、、、」


「「行きます!(ニャー!)」」


「ははっ、アリーナちゃんも来るのか。なら、猫ご飯も作らないとね」


「にゃ~♥️」


アリーナはお兄ちゃんのご飯が食べれるってだけで、この喜びよう。


「南雲会長、どうですか?」


「そうね、命令だもの。お願いしますね、佐月君!」


「あっ、なら私も~」


「希は別に来なくても良いよ!」


「OK、行くから」


ここは、もう慣れっこです。お兄ちゃんは来なくても、と言ったので来ても大丈夫と言う意味です。こう言えば、大抵希先生の分も準備されるので、二人とも相変わらずです。


「そう言えば、お兄ちゃん。このバイクは?」


「はい、この度大学を止めましてジェネシックコーポレーションに就職したのです。そこで、契約金と共に試作バイクを受け取ったと言うわけです。あっ榛名は悪くありません、支社長も好い人ですし、直々のスカウトですので厚待遇ですし」


「はぁ、佐月は高スペックだからな~。南雲先輩、佐月は中々良いターゲットですよ!狙い時です」


「もー、雨宮さんいい加減にしましょう。それじゃあ、佐月君、お疲れ様です」


「えぇ、南雲会長も、、とそれよりも、どうしようか。サイドカーが足りな、、、」


お兄ちゃんが何かを見つけたって視線を向けている。その先には、先程の不審者が乗っていたバイクがありました。


「ふっふふーん」


鼻歌を歌いながらサイドカーを外し、左サイドに付けていく。犯罪かもと思っても、言い出せない自分が辛いです。


「よーし、榛名は僕の後ろに。希ちゃんと七海ちゃんはサイドカーに乗って下さいね」


「お兄さん、レッツゴー! 」


「こら望、佐月さん。宜しくお願いします」


「うん、それじゃ我が家に帰ろうか」




最初ちゃんと運転できるのかと思っていましたが、結果は至って安全運転でした。









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