第3夜 なぜ僕は高所恐怖症になったのか
こんばんは。
皆さんは何か苦手なものってありますか?
僕は高いところが苦手です。
いわゆる高所恐怖症ってやつですね。
自分でもベタな弱点だと思います。
もちろん遊園地で観覧車なんて乗れませんし、スカイツリーも東京タワーも無理です。
地面から3メートルくらいの高さまでしか建物を作れない法律を作ってもらいたいくらいです。
僕がなぜこれほとまでに高所恐怖症になったのか。
今夜はそのきっかけになったある出来事についてお話ししましょう。
そう……あの恐ろしい『弟フワッフワ事件』についてね。
そもそも僕は小学生の頃は高いところまるで怖くありませんでした。
ジェットコースターにだって乗れたんです。
でも中学に入ってから家族で行った遊園地でその事件は起こりました。
僕には年の少し離れた弟がいます。
当時まだ小学生だった弟はようやくジェットコースターなどの身長制限をクリアしたくらいの身長でしたが、非常にやせっぽっちの子供でした。
ガリガリガリク○ンです。
いや、あの名前
やせたガリガリガリク○ンです。(ややこしい)
小学生の頃は小さくて素直で「おにいちゃん」なんて呼んでくれてかわいい弟だったんです。
今では太ったオッサンになって野太い声で「兄貴」とか呼んできて、誰なんだオマエは可愛かった俺の弟を返せって感じですが。
そんなもやしっ子だった弟と乗ったある遊園地の乗り物でその恐ろしい事件は起こりました。
知っている方も多いと思いますが、スペースシャトルが一回転の宙返りをする乗り物ありますよね。
逆さまになった状態でわずかに止まるアレです。
あれに弟と2人で乗りました。
座席に座ると発車する前に安全バーが下りて両肩と
でも身長はギリギリでクリアしたものの、やせ細った弟のところに下りた安全バーと弟との体の間に明らかにスッカスカな
僕は隣に座りながら不安になりました。
これってもっと体に密着してガッチリ押さえてくれるもんなんじゃないの?
係員さんが来て皆の安全バーをチェックします。
僕は弟のことが心配で思わず係員さんに
「あの、これ
僕の問いに係員さんは弟の安全バーに手をかけてチェックすると一言、「オーケーで~す!」と陽気に言いました。
いや、ホントかよ。
だってスッカスカだよ?
と不安になっている僕をよそに安全確認が終わり、スペースシャトルが動き出します。
弟は緊張の面持ちで安全バーを握っています。
だけどスペースシャトルの動きが大きくなるにつれ、弟の体が何だかフワッフワし始めたんです!
や、やばくね?
これやばくね?
僕は
たまらずに隣の弟に腕を伸ばし、その体を必死に腕で固定しようとします。
弟は明らかに座席から尻が浮いている状態です。
スッカスカのフワッフワです!
このままでは弟が振り落とされてしまう!
僕の不安が頂点に達したその時、スペースシャトルも360度の頂点に達し、僕らは完全に逆さまになった状態で時が止まります。
その瞬間。
弟のはいていたズボンのポケットから何かがスッと落ちて宙に舞いました。
それは弟が好きなつぶつぶガムでした。
プラスチックのケースの中に小さなガムの粒がたくさん入っていて、シャコシャコ押すとガムが出てきて食べられるアレです。
そのガムが逆さまになったスペースシャトルを離れて地面に落下していきます。
僕にはその様子がスローモーションで見えました。
そしてつぶつぶガムは地面に落ちてケースが割れ、パーンという音を立てて散乱しました。
僕は今でもその光景が忘れられません。
自分の心の中にあるスイッチが切り替わった瞬間でした。
その後、無事に僕と弟はスペースシャトルを降りて地上の人となりました。
下で見ていた両親や係員さんが心配そうに話しかけてきますが、僕は上の空でそれどころではありません。
脳裏にはフワッフワしている弟と、無残に散ったつぶつぶガムの光景が焼き付いて離れません。
それ以降、僕はスペースシャトルには絶対に乗らなくなりました。
そして他の絶叫マシンにも徐々に乗らなくなりました。
そう。
あの日のスペースシャトルから降り立った僕には『高所恐怖症』という属性が付いたのです。
こうして世の中にまた1人、高所恐怖症人間が誕生したのでした。
人はどんなきっかけで恐怖症を発症するか分かりません。
皆様もゆめゆめ油断なさらぬよう、お気をつけ下さい。
え?
弟はその後元気かって?
元気ですよ。
名前
(ガリガリガリク○ンさん、ごめんなさい)
さて、今夜もお読みいただきまして、ありがとうございます。
高所恐怖症の僕にとってはスカイツリーも東京タワーも処刑台にしか見えません。
明日の朝になったら2メートルくらいの高さになってないかなぁスカイツリー。
それでは皆さん。
おやすみなさい。
またいつかの夜に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます