第22夜 いや、俺のせいじゃねえし!

 皆さんこんばんは。

 枕崎まくらざき純之助です。


 この世には自分ではどうすることも出来ない理不尽な出来事があふれています。

 もし、そんな理不尽な出来事が自分の身に降りかかってきたら、あなたはどうしますか。


 というわけで『世にも奇妙な物語』風に始まりました今宵こよいのPillow Talk。

 あの番組のイントロって怖いですよね。

 聞いてるだけで後ろから幽霊が現れそうで。

 でも安心してください。

 今回も怖い話ではありませんので。


 え?

 どうせまたいつもの馬鹿な話だろって?

 馬鹿とは何だ馬鹿とは!

 そうです!

 今夜も馬鹿な話です!(馬鹿)


 コホン……世の中には理不尽な出来事があります。

 自分には非が無いはずなのに、不利益をこうむってしまう。


 いや、俺のせいじゃねえし!


 思わずそう叫びたくなるような出来事、誰しも一度は経験がありますよね。

 今夜はそんなお話を二つほどいたしましょう。


 まず一つ目。

 あれは僕が中学1年生の時でした。

 教室にいた僕の目の前にいきなり女子のブルマーが飛んできたんですよ。

 いや……違いますよ?

 何言ってんのコイツ、とか思わないで下さいね。

 変な妄想をしているわけではありませんよ。

 ましてや7つの球を集めて神龍シェンロンに「ギャルのブルマー」をおねだりしたわけでもありませんから。


 まだその時代は女子の体操着はブルマーが定番でした。

 そしてその日、体育の授業が終わり、全員が制服に着替え終えて教室に戻って来た休み時間に、その事件は起きました。


 クラスの女子がね、ブルマーを投げたんですよ。(唐突)

 別にクラスの女子の中で教室でのブルマー投げが流行はやっていたわけではありません。(どんなブームだ)


 どうも女子のうちの誰かがどこかにブルマーを置き忘れたらしく、「忘れてるよ」って持ち主の女子に渡そうと投げたようなんですよね。

 いや、そういうのはそっと手渡してあげなよ(汗)。

 女子としてはしたないでしょうが。

 でもまあ中学1年ですから子供っぽい女子もいたのでしょう。


 で、放り投げられたそのブルマーをあろうことか持ち主の女子がキャッチし損ねたがために、偶然その後ろにいた僕の目の前に飛んできたんですよ。

 

 僕は眼前に迫るそれを咄嗟とっさに右手でキャッチしました。

 いや、別に「ラッキー! ブルマーが飛んできたぜヒャッホウ!」とばかりにブーケトスをねらう独身女性のごとくつかみ取ったわけではありません。


 つい取っちゃったんだよ!

 目の前に飛んできたから!

 取らなかったら僕の顔に当たってたんだよ?

 ブルマーが顔にだよ?

 取っちゃうでしょ普通!


 そして僕がそのブルマーをつかんだ途端、その持ち主の女子と投げた女子が悲鳴を上げました。


「キャアアアッ! 変態ぃぃぃ! 私のブルマー盗まないでぇぇぇ! 私のブルマーで何するつもりぃぃぃ! 家に帰って自分でくつもりなのぉぉぉぉ! マジやめてぇぇぇぇぇ!」


 いや、『変態~』以降のセリフは僕の被害妄想です。

 でも、まるで僕がブルマーを無理やりむしり取ったがごとく、女子たちは悲鳴を上げて僕に非難の鋭い視線を送ります。


 ハイッ!

 ここでタイトル回収!


 『いや、俺のせいじゃねえし!』(エコー入ります)


 おまえらが投げてきたんだろうがぁぁぁぁ!

 こっちのせいじゃないでしょ!

 なぜ僕が理不尽な悲鳴と冷たい視線を浴びねばならぬのか!

 僕はあわててブルマーをその持ち主の女子に投げ返しましたが時すでに遅し。


 結局、理不尽にも僕が恥ずかしい思いをすることになりました。

 その後、僕のあだ名は『ブルマー・リバウンド王・枕崎』になったとかならないとか。

 これはマジで理不尽でした。

 まだ中学1年生だった僕がウブい心をどれだけ痛めたことか。

 

 女子の皆さん!

 飛んできたブルマーはちゃんとキャッチして下さい!

 じゃなくてブルマーを投げないで下さい!



 はぁ……さて、気を取り直して話を続けましょうか。

 もうひとつのエピソードは僕が高校生の頃に塾に通っていた際のことです。


 いつものように塾の入口に入ろうとしたところ、僕は自動ドアに首を挟まれました。

 いや、あれってタイミングがあるじゃないですか。

 前を歩く人が自動ドアを抜けて、自分が通ろうとしたらちょうど自動ドアが閉まってきたんです。


 そういう時ってセンサーが作動してドアがまたすぐ開くはずなんですよね。

 でもその自動ドアは遠慮なく閉まり、僕は首を挟まれました。

 まあ、そんなダーンと強く挟まれたわけではなかったので痛くはなかったですよ。

 でもけっこうしっかり閉まっていたので、僕は首を挟まれたまま動けなくなってしまいました。

 自動ドアに挟まれた僕は首から上が建物の内側、首から下が建物の外側にある状態です。


 そう。

 まさしく僕はギロチンに固定された罪人状態だったのです。

 ルイ16世の気分です。

 しかも僕という異物が挟まれているにも関わらず、自動ドアは一向に開こうとしません。


 ぬうう。

 ガンコなやつだぜ。

 これどうしたらいいの?

 そんなことを思っていると、後ろから僕のブザマな姿を見た女子たちのクスクス笑う声が聞こえてきます。


「クスクス。ちょっとヤダァ~。何あのルイ16世。挟まれてるんですけど超ウケる~」

「プッ。早くどいてよルイ16世。私たちが通れないじゃない」


 セリフはまたしても僕の被害妄想ですが、クスクス笑う声は確かに聞こえました。

 いやまあ塾の入口で自動ドアに挟まれた男が動けずにいたら、僕も少し笑いますけど。


 でも自分がこうなるとメッチャ恥ずかしいっ!

 ここは生き地獄か!


 ハイッ!

 ここでまたもやタイトル回収!


『いや、俺のせいじゃねえし!……ねえし……ねえし……』(エコー入りました)


 その後、僕は強引に建物の中に体をねじ込み、何とか入館することが出来ました。

 もちろん恥ずかしいので後ろを一切振り返ることなくポーカーフェイスで教室に一直線です。

 この出来事があってから塾での僕のあだ名は『枕崎16世』になったとかならないとか。

 

 自動ドア業者の皆さん!

 人の首を挟まない自動ドアを作って下さい!

 マジで理不尽ですから!


 はぁ……以上が今夜ご紹介する僕の『いや、俺のせいじゃねえし!』エピソードでした。

 誰ですか?

 相変わらずしょうもないとか言ってる人は。


 ともあれ人間社会で暮らしている限り、人生において理不尽な出来事で恥ずかしい思いをすることは避けられませんよね。

 そんな時は誰かに話して笑い話にしちゃいましょう。

 枕崎は笑われてるだけだろ、とかいうのは言いっこなしですよ。


 さて、そろそろ夜も更けてまいりましたので、今夜の語らいはここまでにいたしましょうか。


 以上、お相手はブルマー・リバウンド王・枕崎16世(完全に変態)でした。

 え?

 もうそれをペンネームにしろって?

 社会的に殺す気か!


「へぇ~。小説書いてるんだ? ペンネームとかあるの?」

「ブ、ブルマー・リバウンド……」


 言えるかっ!


 ……本日もお付き合いいただき、ありがとうございました。


 おやすみなさい。

 いい夢を。

 またいつかの夜にお会いいたしましょう。

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