第15夜 宴会スルー

 皆さんこんばんは。

 枕崎まくらざき純之助です。


 今夜は成人済みの方向けのお話です。

 とは言ってもムフフな話ではありませんよ諸兄。

 残念でしたー!


 え? 

 おまえにそんなつやっぽい話は期待していない?

 うるさい黙れ。

 コホン……ええと、お酒の話です。


 さて、最近は自粛生活のために開催されることが激減しましたが、日本人は好きですよね。

 飲み会。


 昔から年末年始ともなると、やれ忘年会だ新年会だと宴会を開く回数が増えがちですが、最近はそういった宴会を忌避きひする風潮があります。

 昨年末には『忘年会スルー(忘年会に出ない)』なんて言葉も流行したほどで、こういう宴会に苦痛を感じている人がそれほど多いということなんでしょうかね。


 かくいう僕も酒そのものは好きですが、酒の席ってやつがどうにも苦手でしてね。

 まあ理由は単にかったるいからなんですが。

 というのも僕、酒は好きなんですが、下戸の母親の遺伝子を強く受け継いでいるようで、アルコールが入るとすぐに顔が赤くなり、やがて眠くなります。

 そうなるともう頭も体も重く、ただ眠いだけの状態になるんです。


 飲み始めてから一時間くらいですかね。

 カクッと眠りのスイッチが入ります。

 だから宴会も一時間を過ぎる頃にはめっきり口数も少なくなり目もうつろで頭も働かなくなります。

 酒の席で見たことあるでしょ?

 トロンとした真っ赤な顔で一点を見つめ、黙り込んだまま固まっている、そんな人。

 それ、僕です。


 若い頃からよくそんな感じで、人からは「酒の席で寝るな」等やいのやいの言われてきました。

 いや、確かに寝ちゃあいますがね、何も「眠いから寝~ちゃおっと♪」と寝てるわけじゃごさいません。

 フッと意識のスイッチが切れるんですね。

 ありゃもう気絶ですよ気絶。

 抗いがたい意識の途絶なんです。


 そうならないための努力ですか?

 そんなもんどうすりゃいいんだって話ですよ。

 昔から『飲んできたえれば強くなる』なんて戯言ざれごとほざくお歴々はいらっしゃいますが、私に言わせりゃそんなもんトイレの花子さんレベルの迷信です。


 酔い潰れないためには、いっそのことテーブルの下にバケツでも置いてですね、酒を注がれるそばから飲んでるフリしてバケツにバシャッと捨てりゃいいんですよ。

 披露宴か!

 まあ、そんな奴は宴会に来るなって話ですが。

 

 まあとにかく疲れることが分かり切ってるので、忘年会だの新年会だのの類には極力参加したくないわけです。

 もちろん社会人ですから、取引先との宴席等どうしてもスルーできない時もありますよ。

 プライベートでも苦痛なのに仕事での宴会なんて、そりゃもう地獄です。


 愛想笑いと気配りで苦痛の時間を乗り切っておよそ2時間。

 ようやくお開きの時間になる頃に「次はどこいく?」の声。

 次?

 次は家に帰るんだよバカタレが。


 という言葉を飲み込んで2軒目に向かう僕の足取りは法廷に向かう被告人のごとく重く、その表情はさぞや強張こわばっていることでしょう。

 何で2時間くらいでサクッと終われないかね。

 2次会?

 そんなもん行きたい奴だけが行ってくれ。

 周りを巻き込むんじゃない。

 もう心の中は恨みごとの嵐です。


 そして2次会で出される酒やツマミのマズイことマズイこと。

 こっちはもう一回出来上がってますから、これ以上何も口にしたくないんですよ。

 何を飲んで何を食べているのかも分からず、誰が何の話をしているのかも分からないまま、適当な相槌あいづちと引きつった愛想笑いでやり過ごし、ひたすらに秒針が進むのを待つだけの狂気の我慢大会。

 

 そして2次会で済めばいいですが、3次会や4次会まで行きたがる人がいますよね。

 君は何かどうしても家に帰りたくない重大な理由でもあるのかね?

 家に帰ると鬼のように恐ろしい嫁がいて、一晩中罵倒の嵐を浴びせられるのかね?

 

 そんな感じで僕は酔いゲージがすぐに満タンになる燃料設計となっていますので、ダラダラと長い時間飲み続けることは大の苦手です。

 だからプライベートでも各方面に対して宴会スルーをし続けていたら、すっかり飲み会には誘われなくなった次第です。

 そして友達とも疎遠になり、年賀状で年一回の事務的なやり取りをするだけの仲となってますます誘われない孤立スパイラル。

 ま、仕事では念に数回、宴席のお付き合いをしなきゃならない時はありますが、そんなのは我慢の範疇はんちゅうですからね。


 え?

 寂しい奴だって?

 寂しくないですよ。

 これは自分が目論もくろんだ通りの結果ですから。


 酒はね。

 やっぱり家で飲むのが最高ですよ。

 わずらわしいおしゃべりを課せられることも、くだらない与太話を聞かされることもなく、黙って酒の味を舌で堪能たんのうできる。

 そして酔いに任せて眠くなったら寝ればいい。

 最高じゃないですか。


 酩酊めいていして「眠くなったから寝~ちゃおっと♪」と眠る瞬間ほど幸せなものはありませんよ。

 どこぞの街で飲んで、酔った状態で電車だのバスだのタクシーだのを使って遠く離れた家まで帰らなくちゃならないなんて苦行以外の何物でもありませんから。


 勝手に飲んで勝手に酔って眠くなったらその場でゴロン。

 これは最高。

 おい誰だ?

 ダメ人間とか言ってる奴は。


 いや、私ももういい大人ですから宴会のメリットも分かるんですよ。

 酒の席を共にしてこそ、その後の人間関係が円滑になる人もいますから。

 (これ逆もあって、もう二度とあの人と飲みたくない=付き合いが疎遠になるというケースもあるので要注意)


 ただ宴席を苦痛に感じている人の感覚をもう少し理解してもらいたいですよね。

 本当に嫌なんですって。

 仕事してるほうがよほどマシなんですって。

 自分が楽しみたいがために他人を苦しめるのはやめましょうよ。

 自分は楽しいけど相手は楽しめてないんじゃないか?

 という想像力を持って下さい。


 まあともかく『宴会スルー』がもう少し世の中に浸透し、宴会欠席の人が後ろ指を差されることのない社会になってほしいと切に願います。


 あ、ところで酒は好きですけど私は決してアル中じゃないですよ。

 むしろ2日に1日の休肝日を設ける優良ドランカーです。

 酒は百薬の長と言いますが、飲み過ぎて体を壊すほど馬鹿馬鹿しいことはありませんからね。

 皆様も健康に気を付けてお酒をお楽しみ下さい。


 以上、本日は未成年お断りのPillow Talkでした。

 さて、そろそろ眠くなってきたから、寝~ちゃおうっと。


 え?

 いやだなぁ。

 今日は飲んでないですよ。

 ただ、チョコレートを食べているだけです。

 ドールトン・ジン(アルコール6%:原産国ドイツ)をね(ニヤリ)。


 では、おやすみなさい。

 いい夢を。

 またいつかの夜にお会いしましょう。

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