第36夜 出身地と出生地

 どうも、こんばんは。

 枕崎まくらざき純之助です。

 相変わらず、たまに始まるこの気まぐれエッセイ。

 忘れた頃にやってくる夜のおしゃべりのひと時。

 今宵こよいもほんの短いお時間、お付き合いいただけましたら幸いです。


 皆さんは他人から「ご出身は?」と聞かれたら、どう答えますか?

 僕は「東京です」と答えます。

 ただ、僕は東京出身の東京在住ですが、一言に東京と言っても東西に広く、どの辺りに住んでいるか、でかなり意味合いが違ってきます。


 仕事で地方の方とお話しすると「東京? 都会やなぁ」と言われることもありますが、たとえば新宿区や渋谷区などに住んでいたらそりゃもう文句なしの都会っ子ですし、白金などのある港区に住んでいたらそれこそ「オサレ民」です。

 けど、僕の住んでいる地域は東京の西側に位置し、控えめに言って田舎です。

 何度か道を歩くタヌキを見かけたこともあります。

 だから東京というだけで都会っ子扱いされると、何だか居心地が悪いんですよね。


 あと、地方の方にたまに言われるのは電話番号のことです。

 「え? 東京なのに市街局番03からじゃないの?」とおどろかれることがあります。

 昔からあるテレビCMで「♪東京ゼロッサ~ン♪サンニーマルマル~♪」と歌われているように、東京の市外局番は全て【03】と思われている地方の方もいらっしゃいます。

 基本的に【03】という市街局番は23区と狛江こまえ市の一部のみに割り当てられていまして、その他の東京西部地域は同じ東京であっても【03】の市外局番は使われていないんですよね。

 大阪が全て市街局番【06】から始まるわけではないのと同じことです。


 ともあれ地方の方に対しては「東京出身です」と簡潔に答えればいいんですけど、同じ東京都民あるいは近隣の関東地方の方には東京のドコドコと言った方が分かりやすいんですよね。

 ところで出身と聞いて皆さんは即座に答えられますでしょうか。

 たとえば幼い頃に家庭の事情などで別の地域などに転居することもありますよね。


 僕の友達にも生まれたのは大阪だけど、小学生に上がる前に東京に引っ越してきた人がいます。

 その友達は最初こそ大阪弁をしゃべっていましたが、小学校に上がって2年生になる頃にはすっかり標準語になっていました。

 その場合、出身地は大阪ということになるのかもしれませんが、言葉も標準語ですし、おそらく彼自身、大阪での思い出はそんなに多くないでしょう。


 今夜のお題の『出身地と出生地』ですが、そもそもどのような違いがあるのでしょうか。


 調べてみると『出身地』は『その人が生まれた土地、もしくは育った土地』という意味があります。

 一方の『出生地』は『その人が生まれた土地』という意味であり、出身地と比較すると少しばかり狭義きょうぎであることが分かります。

 『出身地=出生地』の人もいればそうでない人もいるでしょう。


 ちなみに僕は住民票の住所と本籍地が違います。

 現住所がA市であり本籍地はB市となっております。

 B市は僕が生まれてから2歳まで暮らしていた場所であり、2歳以降はA市に引っ越して今に至るわけです。(途中、大学時代に世田谷で一人暮らしをしていたことはありますが)

 だから自分にとっての「出身地」はあくまでもA市なんですよね。

 当然、本籍地であるB市のことは実際には住んでいないのだから詳しくは分からず、自分の故郷のことを説明するのなら育った場所であるA市のことを説明するのが自然ですし。


 ちなみに本籍地は個人的な思い入れからB市のまま移していません。

 B市は父と母の実家があった場所であり、僕にとっては「おじいちゃんの家、おばあちゃんの家」があった特別な場所です。

 今は皆、亡くなってしまっており、土地も売られて父母の実家は消滅してしまっているんですが、やはりB市は本籍地として残しておきたいという思いがあります。


 じゃあそのB市が「出生地」なのだなというと、これがまたややこしいことに違うんですよ。

 母が僕を産んだのはB市の隣にあるC市の病院なのです。

 「出生地」というのは定義上、その人が母親の体から生まれた場所を言います。

 産婦人科で生まれた場合はその産婦人科のある場所が「出生地」となるわけです。

 自宅出産の場合は、その自宅の場所が「出生地」となります。

 だから戸籍謄本こせきとうほん上は僕の出生地はC市になっていたと思います。


 つまり僕は自分のことを人に紹介する時に


「どうも。C市で生まれて本籍地をB市としているA市出身の枕崎まくらざき純之助です」


 とするのが最適解なのです!

 どうですか?

 初対面から「こいつ面倒くさい奴だな」と思われること間違いなしですよ。

 

 ところで、ここでふと思ったんですれど、映画とかドラマとかでたまにあるシーンのように、臨月の妊婦さんが出かけ先で急に産気づいて生まれてしまった場合はどうなるんでしょうね。

 例えば東京との県境が近い神奈川県川崎市にお住まいの妊婦さんが、多摩川を越えて向かい側の東京都のショッピングモールに買い物に行ったとします。

 そこで急に「生まれる~」となって救急車を呼ぶも、救急隊員が駆けつけてすぐに生まれてしまった場合。

 その子の出生地は東京になるんでしょうか。


 当たり前ですが、そんなことはありません。

 そもそも陣痛が始まってから実際に赤ちゃんが生まれるまでは時間がかかるものなので、救急車でその妊婦さんが普段から通っている産婦人科に運ばれ、そこで生まれて、その産婦人科の住所を「出生証明書」という書類に記載してもらいます。

 出生証明書は出生届と一体になっている用紙で、そこに「生まれた場所」として出生証明書に記載された産婦人科の住所を書いて役所に提出し、その時点で赤ちゃんの「出生地」が決まるんですね。


 だから当然、仮にタクシーの中で妊婦さんが産気づいてしまった場合に


「う、生まれる~。う、運転手さん……今どこ?」

「い、今は調布市内ですよ。あと5分ほどで世田谷区に入ります!」

「い、急いで……何としてもこの子を23区生まれにしたいの」


 というドラマは現実には起き得ません。(どんなドラマだ)


 まあ現実的なことを言えば里帰り出産もありますし、出生地が北海道で出身地は沖縄という人も実際にいるでしょうね。

 日本列島を股にかけているみたいでカッコイイですね。

 

 以上、今夜も取り留めのない話でした。

 ここまでのお相手は「3つの市にまたがって生きてきた男」枕崎まくらざき純之助でした(アホ)。

 またいつかの夜にお会いしましょう。

 グッナイ!

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