第4話 ストレス発散生活
リコリスが住んでいる家は、かなり古びた外観のもの、中はいたって普通だった。
木造の家は、外とは違い温かみを感じた。
キッチン、ダイニング、洗面所、リコリスの部屋があり、2つの空いた部屋と簡単に言えば間取りはそんな感じ。
「1つ空いている部屋があるでしょ? そっちを使って」
「ああ。分かった」
俺はドアノブを手にし、回そうしたが、鍵がかかっていた。
「開かないぞ?」
「そっちじゃないって。もう一つ隣の部屋」
「ああ。分かった」
言われた通り隣を開けると、難なく開いた。
部屋にあったのは、ベッドと机。それ以外何もなかった。
俺はダイニングの方にいるリコリスに大声で尋ねる。
「ここには誰かと一緒に住んでいたのか?」
「ううん。でも、私が住む前に誰かが住んでいたみたい」
「へぇ………」
そうして、俺は、広い家で寝て、食事をし、外に出て、魔物をひたすらに倒すという生活を送った。
魔物をひたすら倒し、ストレス発散。今まで使えなかった高度魔法をバンバン使って、魔物を倒していく。
魔法を使うことが楽しくて仕方なかった。
飽きること? ないない。
だって、小等部からずっとしょぼい魔法しか使えなかっただぜ?
今じゃあ、爆発魔法をドカーン、ドカーンと連続で放つことができる。もう楽しくてしかない。
「アハハ! めちゃくちゃ楽しい!」
裏世界ストレス発散生活は思った以上にゆったり。
まぁ、たまに彼女とケンカをすることはあったが。
それは俺が風呂に入ろうとした時だった。風呂場のドアを開けると、そこには裸のリコリス。雪のように白い肌が丸見えだった。
あ、やっちまった………。
女と暮らすということは、こういうハプニングも考えられた。夫婦、ましてやカップルなどでもない俺たちは、この先がどうなるか見えていること。
「バカぁ——!!」
リコリスは顔を真っ赤にさせて、たらいを投げてくる。
俺はドアを閉め、謝りながら逃げたが、次の日になってもリコリスは怒っていた。
事故なんだと説明すると、彼女は口を聞いてくれるようになったものの、その日から彼女の態度が少し変わったような気がする。
そんなリコリスの日常は俺の様子を眺めたり、散歩したりしていた。
リコリスの家の近くには、家などはなく、他の悪魔たちが住んでいる様子はなさそうだった。
本当に暇だったんだな………まぁ、近所に誰もいなんだったら当たり前か。
俺が休憩がてら、たまに氷で月の巨大彫刻を作ってやると、彼女は興味深々に見上げていた。
氷は空の赤によって、巨大レッドムーンのようになっていた。
「氷魔法か………いいわね」
憂いの目を浮かべながら、リコリスは巨大氷彫刻を見ていた。
「お前、闇魔法以外に何ができるんだ?」
「できない。闇魔法しか使えない」
「そうか」
そう答えたリコリスの声はどこか悲しそうだった。
「お前、他の魔法を使ってみないか?」
「え?」
「お前、出会った時、弟子になりたいって言ってただろ? 俺が教えてやるよ」
「ハッ。あの時は冗談で………」
「氷魔法を使ってみたくないか?」
魔法を使えない悔しさは俺が一番知っている。魔法を使う楽しさもだ。
「つ、使ってみたい………」
小さく呟く彼女の紫の瞳はキラキラと輝いていた。
「よしっ。俺が師匠だな」
「調子にのるな」
プクーと頬を膨らませるリコリスに、俺はニコリと笑う。
そうして、俺はリコリスに氷魔法を教えることになった。
次の日から、午前中はリコリスに氷魔法を教え、昼食を取った後は、ひたすら魔物を倒すという生活サイクルになった。
裏世界にやってきて、1年が経とうとしていた時。
俺のレベルは9000に達していた。
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