第14話 赤髪の少女
時は経ち、2学期始め。
俺とリコリスは、ゼルコバ学園の校舎を目の前にしていた。1年ぶりの校舎との対面となる。
久しぶりに制服を着ていた俺は少し緊張していた。
一方、隣にいるリコリスはというと………。
「ここにたくさんのおもちゃ候補がいそう」
「どうか問題を起こすのは止めてくれ………」
俺は、こっちに来てから異様に騒がしいリコリスが心配で、高まっていた緊張が吹っ飛んでいた。
この悪魔女、やたらと人間をおもちゃ扱いしようとしている。
そんな
こいつ、黙っていたら普通に美人なのに。何もしなかったら、マジで美人なのに。
そのことを考えていると、ふとあることを思いついた。
「私が問題を起こす? それは間違いよ、起こすのはネルの方だわ。きっと魔法制御できずに、さっそく先生に叱られるのよ」
「………俺はそんなに好戦的じゃない。それよりお前、おもちゃがほしいんだろ?」
「ええ、もちろん。どうしたのよ? さっきまで私が『おもちゃ候補がいそう』って言ったら、文句言ってきたのに。それなのに、ネルからその話題に振ってくるなんて」
「お前のいうおもちゃに丁度いいやつがいるんだ、ハンスっていうやつだ」
「ハンス? 誰それ」
「ほら、裏世界で会った金髪の男」
「ああ~! アイツ! 確かにイジりがいのありそうなやつね。アイツならいいのね? ネル公認のおもちゃなのね?」
リコリスは、キラキラと輝かせた目で問うてくる。
「ああ、ついでにお前が悪魔であることも口封じしておいてくれ」
ハンスを口封じできたら、他のやつらも何も言わないだろう。メミが広める可能性も考えたが、学園に来てからというものの、リコリスよりも俺の方に視線が集まっている。
多分、Lv.9000のことを広められた。そのことに関して、非常に嫌な予感がするが。
俺は、ルンルン気分のリコリスとともに、職員室へ行き、担任の先生の所へ向かった。
俺たちの担任の先生は、女性だった。それもめちゃくちゃ幼い先生。金色の髪をポニーテールし、大人っぽい雰囲気を醸し出そうとしているが、身長のせいで、小学生にしか見えなかった。
だが、椅子に座る彼女からは、異様な威圧感を感じる。
「あなたがネル君?」
「はい」
「そちらがリコリスさんね。私は、あなたたちのクラスの担任をしています、ベルナデッタ・メダイです。今日はもう1人編入生が来るのだけど………ネル君、会ってないかしら?」
「多分会ってないです」
編入生がもう1人いるのか。そいつは俺と違って、普通に編入してきたんだよな。
「まぁ、いいわ。その子はもう教室の方に向かってるかもしれないから、私たちも教室に行きましょうか」
ということで、先生と教室に向かった。
すでにチャイムが鳴っているので、みんな席についているようだ。
…………久しぶり過ぎて緊張するな。
俺とリコリスが教室前に立つと、視線がこちらに集まってきた。
「じゃあ、2人とも自己紹介よろしくお願いします」
「どうも、編入してきました、ネル・V・モナーです。よろしくお願いします」
「私は、リコリスよ。さっそくなんだけれど、この中に私のおもちゃになり………」
俺は、すぐさまリコリスの口を押える。
コイツ、クラスでぼっちになりたいのか! 学園生活を無駄にしたいのか! おもちゃはハンスだけにしとけよ!
口を押える手をはがそうと暴れるリコリスを抑えようとしていると、ガラリというドアの音がした。
「遅れてすみません!」
入り口には、校門で見かけた赤髪短髪の少女。ダッシュでやってきたのか、彼女は、ハァハァと息を荒げ、壁にもたれている。
呼吸が整うと、赤髪の女は教室に入り、俺の隣に立った。
「やっと来ましたか。みなさん、彼女も編入生、今日からこのクラスの一員です。ラクリアさん、自己紹介をよろしくお願いします」
「どうもだYO! 私はラクリア! よろしくYO!」
教室がシーンと静まり返る。ラクリアの声だけが響いていた。
………俺、コイツ知ってるぞ。会ったことがあるぞ。
「お、お前、大通りで会った………」
「そうだYO! 兄ちゃん久しぶり! そっちの姉ちゃんも久しぶり!」
ラクリアは、リコリスに向かってウィンクする。
しかし、リコリスは首を傾げるだけ。見当もつかないのか、小さな声で俺に聞いてきた。
「ネル、この人とどこかで会った?」
「ほら、俺らがこっちの世界に来た瞬間、『FOOOOOOOO!!』って叫んでいた変人だ。いただろ、そんなやつ」
「あー。そういえばいたはね、そんなやつ」
「………3人はどうやらお知り合いのようですので、近くの席の方でもいいですね。後ろの方に席が空いているので、そこに座ってください」
先生の指示に従い、空いていた席に座る。
俺が窓際の一番後ろ、その隣にリコリス、俺の前に、チェケラ女が座った。
チェケラ女は席につくなり、俺の方に体を向けてきた。黄色い瞳で真っすぐこちらを見てきたので、見つめ返す。
………チェケラ女、意外と美人だな。
大通りで出会った時は、グラサンとキャップをしていたから、よく見えなかった。
だが、こうして素顔を見ると、本当に綺麗だった。可愛いというよりも美しいが似合う系の女子。
俺は見つめ合うことに恥ずかしくなり、先に話しかけた。
「………ど、どうした? 何か用か?」
「改めて挨拶をしておこうと思ってさ。私はラクリア! ラッキーと呼んでもいいYO! お兄さん、よろしくYO」
「お、おぅ………よろしく」
やっぱ、コイツ変わってる。
いくら美人であっても、難関と言われる編入試験を通ったやつだとは、俺は考えられなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます