第40話 神王倒し計画

 「神の子って…………神子みこってことか? なら、同じ人間じゃないか。死ぬ概念がないなんてありえないだろ?」

 

 そう話すと、レンは顔をしかめていた。

 人間では…………ないのか?

 俺は思わず首を傾げる。

 

 「うーん…………その神の子とは違うんだよ」


 説明に困ったのか、レンは口を閉じてしまう。

 すると、そんなレンをフォローするかのようにベルティアが話し始めた。


 「ねぇ、レン。はっきりといった方がいいと思うわ。神の子なんて言っても、この世界でいう神の子と混同させてしまう」

 「そうだね。僕は…………僕はこの世界でいう神だ」


 しかし、レンがはっきりと言っても、俺とメミは困惑顔を浮かべるしかなかった。


 「…………ますます理解できなくなってきた」

 「お兄様、私もです。レンが神だなんて…………信じられません」


 ただえさえ、身近にガキのような悪魔がいる。なのに、久しぶりに会った親友が神様? わけわからん。 

 当然俺は信じることなんてできず、訝し気な目でレンを見る。


 「まぁ、いいさ。僕が神だったり、ベルティアやコンコルドが天使であることはどうでもいいこと」

 「ちょっと、私のことをなにしれっと言ってるのー」


 「どうせそのうちバレることだからいいでしょ?」とレン。

 はぁ?

 ベルティアコイツとコンじいが天使だって…………?

 

 すでにパンクしている頭なのに、さらにわけのわからないことを言ってくる2人。


 「まてまてまて! ベルティアコイツが天使? レン、本気で言ってるのか? 悪魔の間違いじゃないのか?」 

 「誰が悪魔ですって、あんなやつらと同じにしないでもらえない?」

 「べ、ベルティアさんが…………てん、しぃ…………」

 

 悪魔と言われ気に食わなかったのか、ベルティアは背中から白い翼をばさりと広げる。その姿を見たメミは驚きのあまり失神しそうになっていた。


 仮装している…………わけでもなさそうだ。

 本当に天使なんだな。


 そういえば、さっき。

 『私はこの世界の人間ではないからね』

 とか言ってたっけ。なるほど、確かに天使は人間じゃない。


 …………。


 でも、なんか思ってた天使と違う。

 もっとこうおしとやかーというか、気品があるというか。


 目の前にいる天使は好戦的。天使って平和を望むもんじゃないの?

 あ、もしかして堕天使だったり…………。


 「ねぇ、今、私が堕天使じゃないかなんて思ってるでしょう?」

 「思ってません…………それでその神様と天使様がなんでこんなところにいるんだ? その様子だと俺に用がある感じだが…………」


 神のレンはかなり前からただの人間の俺に接近していた。何かしらの考えがあって、近づいてきた。

 だから、俺に何か用があると思うんだが…………。


 一体、神が人間に何を望むのだろうか。

 

 「そうだよ。ネル、君に頼みたいことがあったんだ」

 

 レンたちは切り替わったように真剣な面持ちに変わる。


 「神王を倒してほしんだ」

 「しんおう?」


 しんおうって、神様の中の王様ってことか? 


 そんなやつを…………倒せ?

 何を言っているんだ、レンコイツは。

 ベルティアの変人っぷりがうつったか?


 「神の王のことだよ」

 「いや、分かるけど…………なんで俺?」

 「まぁ、色々事情があるけれど、簡単に言えばネルが勇者だから、かな?」


 「それも知ってるのか」

 「だって、僕、神だもん。勇者指定は僕の仕事だからね。いつもなら、8歳超えてから、勇者の印を与えていたけど、ネルには赤ちゃんの頃から、勇者指定していたよ」

 

 マジか。生まれた時点で、俺が勇者確定だったのかよ。嫌なんだけど。

 レンに頼めば、アルカイドの勇者を別の人にしてもらうとかできねーかな。

 

 …………いや、今の話はそれじゃなくて。

 

 「…………だいたい神様にどうやって会うのかも知らないのに、神の王を殺す? 無茶なことをいうなよ」


 「大丈夫。ネルならあともう少しで神様にケンカを売れるようになるよ」

 「…………どういうことだ?」

 

 勇者であっても、人間に変わりはない。

 天使であったベルティアと戦っても、ベルティアはまず死ぬことはなかった。

 

 人間VS天使でさえ、最初から結果が目に見えるようなもの。

 それなのに、チートな神様に人間がケンカを売る? 自殺行為も同然だ。


 「僕が死んだ後、ネルは裏世界に行って、レベル上げしたでしょ? あれね、僕の神王倒し計画の一環だったんだよ。天界でいろいろあって、ネルのレベル上げは部下に任せたけどさ」

 「お前の部下? 会った覚えなんてないのだが?」


 あの時、裏世界で会ったのはコンじいぐらいで。

 コンじいしか会ってなくて。


 …………。

 

 いやいや。

 あのおじいちゃんが、レンの部下? そんなわけないだろ。

 

 「なぁ、レン」

 「何?」

 「まさかだとは思うが、コンじいがお前の部下だということはないんだろうな?」

 

 俺が恐る恐る聞くと、レンはアハハと笑っていた。


 「そうだよ、コンコルドは僕の部下。天使はみんな神の部下みたいなものさ」

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