はめられて強制退学をくらった俺 ~迷い込んだ(地獄の)裏世界で魔物を倒しまくったら、表世界で最強魔導士になっていました~
せんぽー
第1章
第1話 強制退学
魔法学園ゼルコバ。この学園は、筆記試験と技術試験の合計点で成績が出される。
しかし、その合計点が110点に2回届かなかった者は、強制退学。
俺は、その強制退学させられている真っ最中だった。
玄関ホールにはたくさんのギャラリー。クスクスとあざ笑う声が耳に入る。
大勢の注目を集めながら、俺は先生に土下座をしていた。
「ネル・V・モナー、お前を強制退学とする」
「そ、そんな先生………待ってくださいよ」
必死に何度も土下座をし、頼み込むが、先生は横に首を振るだけ。いつになく先生は威圧的だった。
俺はたった1点を落としただけ。それだけなのに。
「合計点が満たさなかったものは、例外なく強制退学だ」
「1点落としただけじゃないですか」
「技術試験で点数を補えればよかっただろう………でも、お前、技術上げる気なかったじゃないか」
決してそんなことはない。俺は必死に技術の勉強も、練習もしていた。
しかし、俺の努力はなかなか反映されず、技術は上がる気配がなかった。
術者のレベルと魔法レベルがあっていなければ、高度の魔法は使えない。
みんながレベルをどんどん上げていく中、俺はLv.12で止まったまま。小等部の生徒と同レベルだ。
当然、Lv.12の術者が扱えるしょぼい魔法を使っても、高等部の技術試験で高得点を取れるはずがない。だから、ペーパーテストで、俺は常に満点を取っていたんだ。
すると、先生の背後にいた少女が、トランク片手に近づいてくる。横から風が吹き、彼女の紺色髪を揺らした。
「持ってきましたわ、お兄様」
「メミ………お前」
メミ・C・モナー。
俺の血のつながらない妹。それもそう。俺は養子で、メミは実子。モナー家の次期当主。学年トップの成績を誇るハイスペック妹だった。
そんな彼女は、トランクを目の前に置くと、俺の耳元に口を近づけ、呟いた。
「お兄様、先日私が渡したお水に何が入っていたか知っていますか? 私特製の『特定記憶抹消薬』が入っていたんですよ? お気づきになりませんでした?」
「なにっ!?」
メミは、小悪魔のようにフフと笑う。
「筆記試験は半分ぐらい点数を落とされると思いましたが、前回に引き続き1点だけ落とすとは、さすがお兄様。でも、惜しかったですね、お兄様」
言い終えると、彼女は耳元から口を遠ざけ、ニコリと笑う。しかし、黄色い瞳は決して笑っていなかった。
衝撃の事実に何も言うことができない。
メミがそんなことを………なんで。いつも俺に優しく接してくれていたじゃないか。
「さようなら、お兄様」
妹は、別れの言葉を告げると、紺色髪を揺らし自室に戻っていく。彼女の背中からは兄との別れの寂しさなど一切見えなかった。
2階から高みの見物をしている1人の男。ブロンドの髪のやつは、嬉しそうな笑みをこぼしていた。
「やっとさようならか、ネル」
「………ハンス」
俺をやたらといじめてきた、ハンス。
やつは俺と目を合わすなり、フッと鼻で笑う。
「お前みたいな落ちこぼれがこのエリート校にいたこと自体おかしいんだよ」
ハンスは自分の取り巻きに「なぁ?」と同意を求める。取り巻きたちもバカにしたような目で俺を見ていた。
「メミもお荷物のお前がいなくなって、楽になったことだろうよ。さぁ、お前は念願の退学だ。分かったなら、とっとと学園を出て行くんだな」
ハンスはそう言って、メミを追いかけて行くように、奥へと姿を消していく。
なんなんだよ………。
そうして、学園を追い出された俺は、1つのトランクを持って、街中を歩いていた。
実家に帰ってもいい。でも、親になんて言われるのやら。きっと適当な学校に入らされるんだろけど、きっと呆れるだろうな。下手すれば、見捨てられるかも。
はぁと溜息をつきながら、大通りを歩いていると、背後から声を掛けられた。
「ねぇ、そこの人」
俺はゆっくり振り向くと、立っていたのはフードを被った人物。声から判断するに女性だった。
「そこの人、これ、入りませんか」
女性は、こちらに何かを差し出してきた。
彼女の手の上には、古びた布でグルグル巻きにされている物。
………なにこれ、この不気味な感じ。怪しさ満載なんだが。
俺は当然のごとく断った。
「いいえ、いらないです。お金そんなに持ってないので、他を当たってください」
「いえ、貰ってくださいな」
「でも………」
フードを深くかぶる女性は、必死に俺にその物を渡してくる。
近づいてくるので、女性の瞳が見えた。エメラルドの瞳がキラリと光る。
その瞳に動揺した俺は、物を受け取ってしまった。
女性は俺によく分からぬもの渡すと、すぐにその場を去った。
怪しいもの………だよな?
好奇心が生まれてしまった俺は、その布を取っていく。
「なんだこれ?」
布を取り、見えたのは緑色の宝石。形は整えられていないものの、かなり大きな宝石だった。
俺は布を捨て、手に取る。そして、まじまじと観察。
結構きれいだし、高価そうだな。
すると、その瞬間、俺の脳内でパリンとガラスが割れるような音がした。
そして、宝石が輝き始め、緑の光が広がっていく。
「な、なんだ?」
視界がぼやけていく。前が見えない。
なんだよ、俺。強制退学くらって、街で倒れるとか。
頑張って、立とうとするが、足がふらつく。
不幸なことばっかだな、俺の人生。
そうして、俺は意識を失った。
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