12
※※※
……、……、……?
…………………………ああ、これは夢か。
夢の中で『これは夢』と気付けるのは、案外難しい。
明晰夢、というものがある。夢を夢だと自覚し、何でも好きな物を産み出せる夢。自由とは行かないまでも、好きに動けたりする夢。
しかし今、僕は自由に動けない。
勝手に動いている自分を、第三者のように傍観している。
これは、過去の光景だ。
夢とは——人が寝てる間、脳が記憶を整理する際に生じる幻覚作用で——基本カオスな光景ばかりだけれど……今回は何故だか、鮮明な過去の記憶の上映会。
あの時のカサネと、あの時のモガミと、あの時のイナリが同じ部屋に居る。
血と、臓物と、涙で汚れた生臭い和室。
三人は、この時の事は覚えていないだろう。
当然だ。僕がそうしたのだから。
三人に、こんな世界は似合わない。
こんな世界とは『無縁』にしてあげるのだと、当時の僕は思ったから。
今も、あの決断には一切の後悔は無い。
後悔なんて、した事ないけれど。
「カサネをよろしく」「モガミをよろしく」「イナリをよろしく」
気付けば、場面は変わり——目の前に、三人の僕がいた。
相変わらずのイケメンだ。可愛い可愛いと言われる意味がよくわからない。
「よくわからないけど、わかった」
僕は三人に頷いた。適当な返答。だけれど、僕なら納得する答え。
三人の僕は微笑む。満足する答え方だったようだ。だって、僕だってそう思うから。
僕はどの世界でも神様。僕はどの世界でもヒーロー。生き方がブレるなどあり得ない。
どの世界でも、僕は僕のままだ。
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