31
◆◆◆
「あら」「おや」
モガミとのイチャイチャタイムが終わり……一人で宿から出た直後、見飽きた美少女と鉢合わせる。
「楽しんでるかい妹ちゃん」
「まぁまぁよ、ギャルゲー主人公君」
「照れるなぁ」
「クズ野郎って皮肉な意味で言ったのよ、バカ兄貴」
腕を組み、ツンツンとどこか棘のある言い方をするユエちゃん。
「何だい藪からスティックに。君の愛する兄貴がクズでバカだと言うなら、その人格を形成したのは君を含めた家庭環境の所為だぜ」
「……否定出来ないわね。いや、それにしたって、あんたは反省するべきよ」
「なにを?」と首を傾げると、彼女は深く息を吐いて、
「さっきまでカサネと買い物したりブラブラしてたのよ。で、さっきあの子宿に忘れ物があるってんでここまで来て……そしたら『涙目になって』出てきてどっか行っちゃった」
「へぇ。それ、原因は聞いた?」
「聞ける空気じゃなかったわよ。でも、原因なんて百パーあんたにしかないでしょ」
「確かに。ふむ……状況から見るに、大方、モガミの喘ぎ声でも聞いちゃったんだろう」
「どうせマッサージかなんかってオチでしょ」
「御名答。伊達にギャルゲーマーじゃないね」
「正解しても嬉しくない」とユエちゃんは唇を尖らせ、
「ほんと、わかりやすいくらいにギャルゲー主人公してるわね」
「エロゲかもしれんぞ」
「どっちでもいい。で、あんたこれから『あの狐』のとこに行くんでしょう?」
「おう、モフモフしてくるぜ」
「ぁー……女とイチャついた後に別の女のとことか、どんな図太い神経してんだが。あんた、マジにハーレムルートなんて修羅進む気?」
迷いなく、僕は頷く。皆と一緒になれる道を、僕はずっと追い求めていたのだから。
「あのさぁ……ゲームとかじゃあ、さも綺麗に美しく皆仲良くって感じに描写されてるけど、そんなのあり得ないって分かるでしょ?」
「うん」
「誰も、幸せになれないわよ。周りも、その先の世代すら不幸になる」
「そりゃそうだ。だから、皆で『不幸に』なればいいんだよ。綺麗事なんてなく、美しくもなく、皆ギスリまくり上等でね。そんなんになっても、僕は皆を選びたいのさ」
「……分かってはいたけど、説得は無理そうね」
ユエちゃんは肩を竦め、諦めたように首を振る。
「何年も僕の妹してりゃ、この流れも分かってた事でしょ」
「まぁ、ね。それに、あんたのそんな決断、ツムグは元より、どうせ父さんも母さんも否定しないんでしょうね。五色家でまともな倫理観持ってるの、私だけっていう」
「そりゃあユエちゃんは橋の下で拾われた子だから、五色のぶっ飛んだ思考回路持ち合わせてないのもしゃーない」
「ほんとにそんな気さえして来るわね」 僕の嘘に乾いた笑いを漏らす彼女。……うん、まぁ嘘だよ。一部、ね。
「はぁ。じゃあ私は、カサネとイナリの友人として、二人が『悪い神様』に愛想を尽かす展開を祈ってるわ」
「酷い妹だな」
ユエちゃんはクスリと笑って
「あ、今更だけど」「うん?」「トライデントの影響だけど、実は私も貴方を好きな世界線から来てたみたい」
え。
「ふふっ。なーんて、嘘。良い顔見れて満足よ」
ペロリ、舌を見せら、妹は去って行く。
それは本当に嘘か、真か。
真実は、彼女にしかわからない。今の僕にはわからない。
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