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――。
「……どうやら、指輪が主と認めた模様ですね。妬ましい妬ましい……」
「ま、分かりきってた結果だねー」
「そ、そも、鋏さんとお嬢は呪いなどに強耐性ですからね……滅多な呪いは受けないでしょう……毒を持ってしても、毒を制す事は出来ません……」
「わはは誰が毒やねん」
こいつら、呑気に会話なんてしやがって……一歩間違えりゃ五色も尾裂狐も終わってたってのに。
「そ、その指輪は二人で持っていて下さい。鋏さん相手に言うのも何ですが……指輪が正しい力を発揮するならば、お互いの縁は硬く結ばれる事でしょう。お代は要りません」
「え? いいの? やりーっ」
「そ、その子達も、数百年経ってようやく主と巡り会えたのですからね……大事に、して下さい」
頭を下げられ、反射的に「お、おう」と返してしまう。何か流れで鋏と、その……ペアの指輪を手に入れちまったな。
「じゃあ貰うもん貰ったし、僕達はこれでねー」
「は、はい。……あ、お嬢……これを」 鋏が向こうを向いてる隙に、店員はこっそり、あたしに小瓶を渡してくる。
「ん、なんだこれ。香水?」
「は、はい。嗅がせた相手を廃人レベルにまで使用者の虜にさせるデスパヒュームです」
「こえーよっ。こんなもんどうしろってんだっ」
「つ、使い方はお任せします。因みに狐花さん……長は、これで旦那様を落としました」
「聞きたくなかったよっ。次顔合わせ辛いわっ」
「か、カップルに手を貸すのは不本意ですが……これも尾裂狐の繁栄の為です。お、お嬢は普段と違ってこういう事はヘタレくさいので」
「喧嘩売ってんのかっ」
「ま、まぁ耐性マックスな鋏さん相手だとコレでも効果は微々たるものですが……無いよりはマシという事で」
「んー? 二人共、何をコソコソしてるのー?」
「な、何でもねぇよ! ほら行くぞっ」 鋏の手を掴み、そそくさとその場を離れる。流れで貰った香水は、そのままポケットに突っ込んだ。
――それから。
「洒落おつな場所を知ってるんだ、そこ行こうよっ」と手を引かれて連れられた場所は……ログハウスの喫茶店。普段はロッジとして使う場所を今回の慰安旅行の為に改装し、こうして経営してるらしい。
「しかし、何でお前この店の事知ってんだ? その……午前中とか昼過ぎは、この辺うろつかなかったんだろ?」
「んー? まぁ、このお店は僕も『関わってる』っていうのもあるし、出店してる事は狐達からも聞いてたし。ま、兎に角入った入った」
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