概要
地味で真面目なこの女を気になるきっかけは手首に残った傷痕だった。
これは一人の男の、情けなくて独りよがりな恋の物語だ。
注:この作品には自傷行為や性的行為を匂わせる描写が含まれます。苦手な方はご遠慮下さい。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!人間臭さの描写が巧み。かつ素直な文脈の中の多彩な表現。まさしく文学。
非常に面白かったです。という感想がまず練り出されます。単純な恋愛小説ではないのだろうな、と作者様の別の作品を呼んだ経験上、思ってしまいました。
物語の視点は、主人公の恋をする視点——これが巧みです。なぜ好きになったのか、なぜ心を彼女が独占してしまうのか。誰でも理解できる文脈にも関わらず、とことん追求しています。非常に人間臭い思考の中で生み出された恋心が、どうなっていくのかを丁寧に描写していく様は圧巻です。
思考にベースラインを置いた物語で、彼の考えは愚直でかつ誰しも青春時代には頭をよぎることなのではないでしょうか。思考の先にある想いに至るまで時間は掛からなかったようです。
最後…続きを読む - ★★★ Excellent!!!これは深い話なのだと思う
読み始めて1話が過ぎた時には、ただ驚いた。
赤裸々に描かれた主人公の想いと行動に驚いたのだが……
だがこれはとても深い話であるとも気付く。
手首に自傷行為の跡。
つまり、彼女は死のうとしたか殺されそうになったことがあるという事だ。
その傷を見てしまった主人公の心には何かが生まれる。
自慰行為は生きる証のようなものだと思う。
彼女の死に近付いた傷から彼は生きる行為に走る。
「死」から感じる「生きる」という事。
鳥肌が立つような思いがした。
最後まで彼女の思いはわからない。
「今は彼はいない」という言葉から、街で出会ったのは家族かもしれない。
でも、彼は何かを失ったと思うのだ。
それは死に…続きを読む - ★★★ Excellent!!!『表現すること』への大いなる挑戦に、惜しみない称賛を。
すべてが素晴らしい。
まさに、このような作品こそが高く評価されて欲しい。
「君の手首に傷を見つけたあの日から、俺の情けない恋は始まった――」というキャッチコピーからもわかるように、主人公の男性が自傷癖のある女性に恋をする様子を描く作品である。
こんなふうに書くと、「メンヘラを馬鹿にしないで!」と怒る人や「精神的な病をネタにするなんて不謹慎だ」と顔をしかめる人もいるかもしれない。
あるいは「そういう題材の話ってどれも似たようなものばかりだよね」とスルーする人もいるかもしれない。
しかし、そのすべてを否定させていただきたい。
主人公目線で描かれた作品ということもあって、作中では主人公の心…続きを読む