これは深い話なのだと思う

読み始めて1話が過ぎた時には、ただ驚いた。
赤裸々に描かれた主人公の想いと行動に驚いたのだが……

だがこれはとても深い話であるとも気付く。

手首に自傷行為の跡。
つまり、彼女は死のうとしたか殺されそうになったことがあるという事だ。
その傷を見てしまった主人公の心には何かが生まれる。
自慰行為は生きる証のようなものだと思う。
彼女の死に近付いた傷から彼は生きる行為に走る。
「死」から感じる「生きる」という事。
鳥肌が立つような思いがした。

最後まで彼女の思いはわからない。
「今は彼はいない」という言葉から、街で出会ったのは家族かもしれない。
でも、彼は何かを失ったと思うのだ。
それは死に近いはずの彼女が、穏やかな笑顔で生きる行為をするのだろう事がわかるからではないだろうか?
彼はもう彼女を自分の中で生かす事ができないという事ではないか?

恐らく、彼の中で彼女を意識しての自慰行為は止まってしまうだろう。
彼女は誰かに生かされるのだから……

そんな気がした。
生と死をこれほどまでに描き切った小説は久しぶりに読んだ気がする。

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