この話は確実に短編です。
でも読んだ後、長編を読んだような、2時間近くの映画を見たような、そんな気持ちになります。
それだけ内容が濃いのです。
ひとりの少女と彼女を世話するためのディーナーの青年、この二人の関係は後に明らかになるのですが、設定から何まで驚きの連続でした。
これ程のものを短編で読めるとは思っておらず、改めて詩一さんという物書きの底知れぬ力を感じています。
短編ですよ。
たった8話の短編で、こんな事ってあるんだと……
それだけに言葉が洗礼されていて、無駄なものがどこにも見えない。
正直に言います。
参りました。
私の目指すものがここにあったという気持ちです。
書けるものなのですね、このような物語が……
彼の凄さを感じた作品です。
素晴らしいです。読んでください!これは読むべきです!
の災厄を取り払うための人柱、『アリス』。
『アリス』に選ばれた少女リーエと、彼女を救うべく暗躍する使用人ロイの物語。
『アリス』という名から、無垢さや大人の世界に汚されていないイメージを持ちました。そのため冒頭のシーンは、まっさらな器に穢れを詰め込むイメージが形成され、リーエの諦念とロイの辛さがひしひしと伝わってきました。
アリスのように自分の気持ちに純粋なリーエと、淡々と仕事をこなしていくロイのスタイリッシュともいえる戦い。
一話一話が映画のシーンのように計算されたエピソード割りも鮮やかです。
エンディングは皆さん読んでみてください。
とても気持ちよく読み終えることができました。
アリスといえば不思議の国のアリスに代表されるように、美しい少女や幼女を思い浮かべる人は多いでしょう。
でもアリスに選ばれるって、いったい何!?
その冒頭で、たった一文で、僕はこの物語に強く引きずり込まれました。
さて、物語は情緒溢れる西洋風の異世界。ドイツ語に彩られた美しき世界です。
その中で繰り広げられるのは、大切なものを守る為の闘い。
それはまるで叙情詩のような美しい物語なのです。
短編ながら重厚な世界観、ほんとに、ほんとうに! 短編であるのが惜しい、もっとこの美しい世界に浸っていたい、そう思わせる物語。心して、そのページを捲って頂きたい。