あの時の両親と一緒に、東大に挑戦してみた。

読天文之

第1話序章「浪人六年目の憂鬱」

 「今年もダメだったかあ。」

 私はスマホに映る東大前の合格発表の欄に、自分の受験番号が無いことを確認した。ちなみにこれで六回目、もう落ち込む気にはならなかった。私は直ぐに母親に連絡した。

「もしもし、母さん。」

「舞子、どうだった?東大合格できたの!?」

「ごめんね、落ちた。」

「まあ・・・・、一体何がいけないのかしらね?とにかく、帰ってきたら直ぐに勉強よ!」

 母は力強く言ったが、心のどこかでは私に失望しているのかもしれない。

「分かった、じゃあね。」

 私は通話を切ると、東大を後にして駅に向かった。途中、見覚えのある女性に声を掛けられた。中学の同級生・優華だった。

「あれ!舞子じゃない、久しぶり!!」

「優華!ていうか、どうしてここに?」

「実は私、この近くの不動産会社で働いているの。舞子の職場はどこ?」

「私は就職していない。」

「じゃあ、どうしているの?」

「東大合格を目指している、頑張ったけど今年もダメだったよ。」

「ていうか舞子ってずっと東大合格を目指しているよね?よく心が折れないというか、・・・・折り合いつけて諦めて就職しようとか考えないの?」

「東大合格は私の夢だし、合格して卒業するまでは就活は許さないって両親がいうから。」

「あんたの両親、もう教育オタク通り越して異常だわ。」

 優華は苦笑いをした。

「あっ、仕事に戻らないと。じゃあね!」

「うん、またね。」

 優華は去って行った、高校進学を機に疎遠になっていた優華は社会人になっていた、私が社会人になれるのはいつの日だろう・・・・・・・。

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