第18話終章「遅咲きのサクラ」

 二月二十四日、舞子は鬼塚に退職届を提出した。ちなみに舞子の東大合格は、すでに社員全員が知っていて、退職日は三月十四日になっている。

「ついにこの時が来たか・・・。」

「はい、今までお世話になりました。」

「君には東大が待っている、改めて合格おめでとう。」

「ありがとうございます。」

「私も鬼塚パーソナリティの社長として頑張るよ。」

「え?この会社って、沖浦堂では?」

「ああ、君には言っていなかったな。実は我が社は改名して、新たな事業を創めるつもりだ。」

 実は鬼塚は、いつか沖浦株式商事から独立する考えがあった。その時に沖浦泰三の逮捕が報じられ、沖浦株式商事の信用が地に落ちたのを見て、これはいい機会だと見たのだ。

「そうだったんですか、それは凄いですね。」

「お互いに新たなスタートという事だ、ところで有休はどれぐらい残っている?」

「五日です。」

「じゃあ、三月九日に退職祝いと合格祝いを兼ねた飲み会をしよう。」

「ありがとうございます。あの、彦田と納言も呼んでもいいですか?」

「ああもちろん、君の兄弟だろ?」

 本当は両親なのだが、鬼塚にはそう伝えてある。

「はい、でも未成年なので酒とビールは止めてください。」

 そして三月九日に、予定通り飲み会が開かれた。舞子と彦田と納言は、祝福の宴を楽しんだ後、東大入学に向けて準備を進めた。



そして四月十二日、東大の入学式を迎えた。舞子と彦田と納言は、東大の門の前に立っている。

「ついに来たわね。」

「ええ、憧れの東大に。」

「これから、第二の人生が始まるのか・・・・。」

「さあ、行こう!!」

 両親は若返ったままだが、これからの東大生活に期待を膨らませている。そして遅咲きの青春時代のページを、舞子と彦田と納言はこれから作って行くのだ。

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あの時の両親と一緒に、東大に挑戦してみた。 読天文之 @AMAGATA

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