純度の高い文章が紡ぐ青春物語

読み始めてすぐに、一文一文が研ぎ澄まされ、凝縮されたものであることに気づいた方は多いと思います。
奇をてらった表現や、珍しい語彙を連ねるのではなく、伝えたいことに沿って丁寧に削り出された文章が印象的でした。
また、登場人物たちの繊細な心の動きに、同じ社会のどこかにこんな人たちが生きていそう、というリアリティを感じます。
劣等感や嫉妬、五里霧中の感覚など、十代のころ、あるいは大人になり切れない二十代で感じた気持ちが随所に詰まっていました。
加えて、音楽やスケートに関するディティールにあふれた知識も、世界観を構築するのに大きく貢献しています。
同じ現代を生きる人々が主人公だからこそ、詰めが甘ければすぐに見破られてしまうポイントかもしれませんが、隙なく考証されており、全体の安定感を支えていると感じました。

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