楽園の子どもたち

作者 陽澄すずめ

173

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★★★ Excellent!!!

二つの場所と二つの視点をうまく使ったギミックの効いたミステリアスなお話です!
舞台が近未来の日本のような感じで、SFっぽさもあります。

どうも我々の感覚では理解できない、不思議な掟を護っている村と、
我々と似たような場所で生きる警察官の主人公。

二箇所それぞれ、二つの視点で交互に描かれていく物語が、一点で結ばれた瞬間、物語は加速。読み手の感情も一気にヴォルテージが上がります。

え?10万字ありました?ってくらい一気読みしてしまいましたし、何より読みやすいです。

小説とか長々文章読むのは苦手だけど、ミステリーや謎解きは好きという人もけっこういると思うんです。
そういう人たちにもおすすめできるくらい、読みやすくて面白くて、すごく惹きつけられる作品です。
何だか眠れない夜とか、何かの待ち時間に一気読みなんていかがでしょう?
るうさんオススメです!

★★★ Excellent!!!

 設定が秀逸でした。決められた掟に縛られる村に閉塞感を感じましたし、現在の日本が抱える問題を見据えた近未来の姿など、よく練られていてリアリティを感じました。二つの世界が平行して語られていきますが、あれこれと想像しながら読み進めるのは楽しい作業でした。

 村で暮らす三人の子供たちを中心に物語は語られ、歪な村の姿が徐々に浮かび上がっていきます。一方、近未来の世界でも、自警組織に属する女性の前に謎めいた少女が現れて、事態が変化していきます。村でのお話は、どこか詩的で幻想的な文体であるのに対して、近未来の方は端的でリアリスティックなのも面白いし、上手いです。


 二つの世界は交錯していき、後半にはドラマチックな展開が待ち受けていて、思いも寄らない事態に発展します。読む手が止まらず、ぐいぐいと読んでしまいますね。

 テーマ性も深く、ラストも素敵な余韻が残りました。オススメです!

★★★ Excellent!!!

全の章と一の章が交互にすすんでいきます。

全の章は、あやしい閉鎖された村です。村の掟、祭、奇妙な雰囲気です。村の外を知りたくなる子供たちの気持ちは分かります。でも、それが恐ろしいことに……。

一の章は、対照的に近未来的です。
それら全く違う二つが交差します。見事な構成!
2度読んでも面白いです。

どんでん返しテーマにぴったりです。この作品に光を!


キャラもいいです。
かっこいい女性。憧れます。
勇敢な少年。感情移入して、激昂のシーンは壮絶です。

人間ドラマとしても見所満載です。感情表現うまいです。

タイトルのセンス。


文章がうまいので、状況が浮かんでくるようでした。

このクオリティをただで読めることに感謝!

感動!

★★★ Excellent!!!

とある閉鎖的な村がある。そこには、独特な風習を用いて生活する人々があった。
一方、犯罪が渦巻く、ほとんど機能停止した近代社会がある。

この作品はあらすじにもある通り、真逆な二つの世界が交互に綴られていくサスペンス、ヒューマンドラマです。最初こそ共通点のない分かれ道のようでした。しかし、物語が進むにつれて道は一本となる。
すべてが繋がる瞬間が快感であり、不快でもある。この物語の正体を掴んだら、まさにそうとしか言えない。
どうしてそうなったんだろう、正解はなんだったんだろう、どこで間違えたんだろう。彼らの感情に激しく突き動かされます。それでもなお、彼らは立ち向かう。

私の悪い癖は、あらすじから先に物語の内容を読み解こうとするところです。そして、こういう類の物語が大好物です。
しかし、そんな悪い癖で読みながらも、楽園の秘密が明かされたシーンはワクワクし、物語を夢中で読み貪っていた子どもの頃を思い出しました。
それと同じく、物語に出てくる村の子どもたちは好奇心旺盛で、村の「外」を知りたがる。知らない方が幸せなことも確かにあるでしょう。できれば知りたくなかった側面や真実を思いがけず目の当たりにしたら、ショックで言葉も出ません。それからどうやって生きていけばいいのかわかりません。
これは、そんな楽園で生まれた子どもたちの、子どもたちによる救済の物語。意思は確実に受け継がれていき、それがたとえ真っ暗闇な答えでも、迷っても、道はいつか開けるはず。
ぜひ、ご一読を。ぜひ、一気読みしてください。

★★★ Excellent!!!

どこか古くから変わらぬ村を思わせる、独特な掟を敷いた謎の地を描く『全の章』

かたや近未来的な、現在の社会制度が崩壊してしまった世界を描く『一の章』

さて、これはいかなる物語かと読み進めていくうちに、一と全、二つの間の壁がじわりじわりと滲んでいき、物語は真の姿を明らかにします。

これは見事なミステリーでありながら、私にとってはホラーでもありました。別に幽霊やらなにやらが出てくるわけじゃありません。ただ、人間がとてもこわい!この怖さはアレです。遭難してようやっとたどり着いた山奥の村で『ここにいる間は掟に従っていただきます』とか村長がにっこり微笑むやつ。

おかげさまで、読み進めつつ『え、駄目だって、それ絶対行っちゃだめなやつぁぁぁぁあ!』とかジタバタしながら気がつけば読了しておりました。

とあるトリックが効いていて、私はすっかり騙されていたので、ええ!?と声をあげることになりましたが、皆様はいかがでしょう。お試しあれ。

★★★ Excellent!!!

「一の章」と「全の章」が交差し合う構成は、他の方も書かれている通りです。
ネタバレ防止でやんわりした書き方になってしまいますが、後半で謎が明かされるのを見るうち、ここで描かれている世界はファンタジーと言い切れるか、と思った人は多いと思います。
ルールに縛られることはルールに安住することでもあるし、無力な存在の声なんて聞かずに抑圧してしまうほうが手っ取り早い。
ごく普通の大人の持つ怖さが、巧みにプレゼンされた作品だと感じました。
いくつも引かれた伏線が回収されていく終盤は鮮やかです。
どんでん返し部門にぴったりの作品だと思います。

★★★ Excellent!!!

交互に描かれる、二つの別々の世界。

何の繋がりもないように見えた二つの世界ですが、両方にそれぞれ不穏の影が落ちるや、引き合うように繋がり始めて……?

と、このような感じで紡がれていくストーリー。

何を言ってもネタバレになりそうなので多くは語れませんが、まさか! そうくる!? こんなことになるとは!! の連続技による怒涛の展開に、目が離せなくなりました。

痛みや悲しみや遣る瀬無さに揺さぶられつつ迎えるラストに待っているのは、切なくて優しくてあたたかな絆。

この物語に出会えて良かったと、心から思います。
一気読み、全力推奨です!!

★★★ Excellent!!!

全の章と一の章、ふたつの視点が交互に描かれいく構成が面白い作品です。
一気読みで読了しました。ぐぐっと引き込まれてあっという間です。

まったくちがう世界観に思えるふたつの章が交差していき、やがてひとつに重なって、そして……。

人間の弱さ、身勝手さ、無情さに迫る、シリアスな作品ですが、主人公たちが辿りつく先は希望に満ちていて、読後は暖かい気持ちになりました。

一度読むと、この先もずっと頭に残りつづける、そんな読み応えがあるものを求めている方におすすめです。


★★★ Excellent!!!

『全の章』はとある村、しかも何だか不思議な風習がある村のお話。
『一の章』は国家が財政破綻し、地方自治で運営される、どちらかと言うと現代に近い場所でのお話。
まるで違う『全の章』と『一の章』で起こる出来事を読みては交互に見ていくことになります。
少しずつ『全の章』の内容が『一の章』に出てきて、それを推理しながら読むのが面白かったです。
交互に読みつつも最終的に一つの物語に集約されていくところが心地よくさえありました。
ミステリ好きに特にオススメな一作です。

一気読み推奨とのことでしたが、時間のあるときに少しずつ読み進めました。
なかなか印象に残るお話が続くので、案外前のエピソードが記憶に残っていて、問題なく読めました☆
ちょっとずつ読む派の人でも楽しく読めると思います。

★★★ Excellent!!!

面白いです!
可能であれば一気読み推奨です☆

一見、何の絡みもなさそうな二つの視点で二つのエピソード、二人の主人公でパラレルに物語が進行しますが、実は密接に関わり合っていて予想外の展開に動いていきます。

パズルが組み合わさるように謎が解けていき、すべての伏線が回収されるかのように物語は一つに収束して、かつ衝撃のラストはいかに!?

「楽園の子どもたち」というタイトルですが、現代の日本の少子化問題のなれの果てのディストピアを、詳細に鮮明にそしてどこかおどろおどろしく描かれており、どこかリアルで、その対比が妙にシニカルです。

すべてがネタバレになりそうで、内容についてはぜひご自身の目で確かめてみてください!
読みやすさも文章の表現力もピカイチです! オススメです!

★★★ Excellent!!!


 この物語は、ふたつの異なる世界が交互に描かれています。

 片方は、掟に支配され、文明を拒絶した世界。なにか息のつまる「村」です。すごく小さなコミュニティーという印象です。
 こちらの主役はユウマという少年。自分よりすこし年上のチィ姉ちゃんに仄かな憧れを抱いています。

 もうひとつは「街」です。まるで近未来のような世界。でも、科学技術が進歩している印象はまるでなく、高齢化ばかりが進んでいます。国家が崩壊していて治安が悪く、なんとも息苦しい。
 こちらの世界の主役は、警察局につとめる女性、一ノ瀬。男勝りです。


 「村」に住むユウマは、好奇心から、チィ姉ちゃんたちとともに村の秘密に触れてしまい、そこから少しずつ何かが狂い始めます。


 一方、「街」の警察局に勤める一ノ瀬は、保護された身元不明の美少女を事情聴取するうち、相棒の佐伯のおかしな行動に突き当たります。


 最初は無関係に見えた、ふたつの世界のふたつの事件。これが回を追うごとに、徐々に関連性を持ちはじめ……。


 冒頭から始まる、もやもやした感覚。何かがすこしずつ傾き、崩れていく予感。そして始まる崩壊のとき。

 ディストピアな終末を描いた黙示録的世界を本作に期待した人は、ちょっと肩透かしをくらうかもしれません。

 本作の主題がなんであるかはちょっと難しいのですが、でも、読んでいて、先に進めば進むほど、ぼくは登場人物の「家族」というものを強く意識しました。

 彼らに与えられている家族はどれも作られた物で、自然に生まれたものではない。

 だが、そんな中で彼らは、自分が一緒にいたいと思う人を見つけます。

 住んでいる世界を囲む高い高い壁の下に掘られた、深い深い穴を抜けて、自分が本当に一緒に居たいと思う人を見つける。そんな物語でした。




★★★ Excellent!!!

「何も知らない」ではいられなかったでしょう。
イヴが楽園の果実を知ったように。
地域に根差す祭りをきっかけに、子どもたちは或る異変に気付きます。
気付いてしまったら、もう引き返せません。

「思い出さず」にはいられなかったでしょう。
自分が子どもで在ったころを。
近未来、少子化が進み政府が破綻して自治体により管理される社会。
自警組織に勤める大人が、或る子どもの記憶に関わっていきます。

読み始めたとき、ふたつの「章」の境界は確かにあります。
読み進めるうちに境界が見えなくなるかの如く、ふたつの「章」が合わさります。
異なる線の上と思われた出来事が、ひとつの線の上に集められていく過程が実に見事で、小説という媒体をエンターテインメントとして此処まで高められるのだと、感慨深く拝読しました。

『楽園の子どもたち』というタイトルが香らせる場所。
永遠のディストピアなのでしょうか。それとも……。
登場人物たちが過去に想いを馳せる時、浮かび上がる思い掛けない「どんでん返し」と、其処に至るまでの物語の交差と収斂を、ぜひ多くの方に味わっていただきたく思います。

★★★ Excellent!!!

警察局局員・一ノ瀬は、ある日保護された身元不明の少女・知里と出会う。
その出会いは、彼女の想像を超える、ある未知なる社会との遭遇の始まりだった――。

生き生きとしたキャラクターたちによって進められていく、色鮮やかなストーリー。
巧みな心理描写に導かれ、彼ら・彼女らに寄り添って読み進めるうちに、知らぬ間に読者も不思議な世界へと迷い込んでいきます。

そこは不思議な制度・掟に支配された世界。その在り方の理由とは?
キャラクターたちの動きを追いながら、この社会の利点不利点問題点などが、徐々に浮き彫りになっていきます。

人間にとって、最も大切なものは何か。
改めてじっくりと考えたくなる、読み応えある作品です。

★★★ Excellent!!!

少しずつ段階を踏んで読んでいこうと思っていたのですが、謎が解けてきた辺りから先を捲る指が止まらなくなりました。
視点の中心である登場人物以外の人達の感情の機微や敢えて伏せていたのかもしれませんが、どんな人物かをもっと知りたいと思いました!

★★★ Excellent!!!

困った。
拝読後、感動のあまりレビューボタンを押したのだが、書きたい事が多すぎる。
だが、下手に書くとこのお話を読む方の楽しみを減らしてしまう。

そんな理由から私は敢てストーリーには触れず、この物語の筆者、陽澄すずめさんの描く子供たちの魅力の一部分について書きたいと思います。
『純粋だけではない子供』
誤解があるかもしれませんがすずめさんの描く子供たちの魅力を一言で表現するなら一番合う言葉はコレだと思います。
歪み、嫉妬し、欲望し、そして焦がれる。その幼さゆえの眩いばかりの葛藤がファンタジーでミステリーで冒険小説で恋愛小説で描かれてゆきます。

そんな魅力的な子供たちの出てくるこのお話を皆さんも読んでみてください。ミステリーであり、ファンタジーであり、冒険小説であり、恋愛小説であり、現代小説でもある。このお話を!

★★★ Excellent!!!

 この物語は家族の概念がない「単家」の世界と、自治区の世界が交互に描かれることによって、謎が深まり、そして解決していく物語だ。
 「単家」とは、一つの「家」の単位であり、家族や結婚の概念がない。周期ごとに人間が家を移動して、一つ屋根の下で暮らす。しかしお転婆なチィは、村から追放された「追放者」に「結婚」や「家族」について聞き出そうとしていた。弟分のユウマは、いつもチィに手を引かれていた。そして兄貴分のセイジは、そんな二人をいつも守ってくれた。しかし、ある祭りで禁忌を犯したチィは、蔵の中に閉じ込められる。ユウマとセイジは、チィを助けようと奔走し、セイジは村を支配している「教師」になることを決意する。
 一方、自治区ではチサトと名乗る少女が保護された。保護を任されたのは、一ノ瀬と佐伯のバディだった。チサトは何もしゃべらなかったが、思い出したかのように、「ホウジョウサイ」という言葉を発し、「兄ちゃんが村を壊そうとしているから、助けて」と一ノ瀬に訴える。しかし、そんな中、佐伯が失踪する。

 佐伯の失踪の謎。チサトの正体。そして「単家」と禁忌とは?
 
 二つの世界観が同時に味わえる贅沢な作品。
 民俗学的な要素を持つ村の世界と、自治区の世界。
 いずれも興味深く、そこに組小細工のように謎が散りばめられる。
 そして物語は疾走感を失わずに、全ての伏線を見事に回収して、感動的なラストに向かっていく。

 まさに、まさかのどんでん返し。

 是非、是非、ご一読ください!

★★★ Excellent!!!

ふたつの全く異なる世界でそれぞれに繰り広げられる物語。
全の章で語られるのは、不気味ですらある『村』の存在とそのしきたり。それは概念に凝り固まって行き過ぎた世の中を見せられるようで恐ろしい。
一の章で展開するのは現代的なミステリー。
この二つの話が交錯するとき、読者は思わず唸ることでしょう。

其処此処へ仕掛けられた巧みな伏線と、読者を迷路へと導く筆致。
そこには森へ迷い込むように物語の中へ迷い込む快感があります。

家族とは、社会の在り方とは、その中で生きることとは、何のためか、誰のためか。
生き続けることにどんな意味があるのか。
ストーリーの面白さだけでなく、ひとの根源のところに繋がるテーマも深い。

独特な世界観にどっぷりと浸って欲しい、できればまとまった時間で読み切って欲しい、手応えの強い作品です。

★★★ Excellent!!!

少子高齢化により、地方自治で運営される警察局で働く女性・一ノ瀬の物語。
同僚の佐伯とともに、上司から命じられた内容は、保護された少女・知里の身元を探ること。

一の章と名づけられた一ノ瀬の物語とは別に、全の章で語られるのは、すべてが管理された『村』で暮らす三人の子ども達の物語。

交互に配された物語は、やがてひとつの大きなうねりとなり……。

惚れ惚れするような美しい文章で紡がれた物語に、余計な言葉はいりません。
どうぞ、ぜひ読んでこの驚きと感動を味わってください!



★★★ Excellent!!!

この物語は全の章と一の章。交互に進んでいきます。
全の章はとある閉ざされた村の話。
一の章は村の外の世界の話。
特に村の世界の陰鬱とした雰囲気がリアルで、読んでいて辛くなるほど。
二つの章が段々と進む頃に、この物語の仕掛けが明かされます。
この仕掛けを知った時は”ヤラレタ”と唸りました。
ともあれ、諦めない心、信念、罪悪感、覚悟などが目一杯詰まっています。
ディストピアでミステリーでサスペンスでヒューマンドラマなこの物語。
読み始めたら先が気になって夢中になること請け合いです。

★★★ Excellent!!!

一見、別軸に感じられる二つの物語。
しかし、少しずつ干渉しあい、もはや切り離せないほど強く絡み合っていく……。

子供たちの視点で語られていく価値観と、現実に生きる大人の視点。
これらが相乗効果を生み、読者をどんどん引き込ませてくれます。

なぜその世界はそうであるのか。
散りばめられた伏線と登場人物たちが抱く感情の起伏、とても冷静な状態では読めません。
読者を確実に世界へ引き込み、感情移入させられるため、常にハラハラどきどき。

こんな完璧なミステリー、筆者の力は無限なのだと感じさせられます。
連載途中のレビューとなりますが、もちろん最後まで(あとがきまで)追っていきます!

★★★ Excellent!!!

世界よ、刮目せよ。
巧みに散りばめられた伏線、綿密な構成。
これが陽澄すずめの小説である。

そしてこれは世界に対する警笛である。

少子高齢化が進行したらどうなるのか、人の気持ちを無視した制度で人を縛り付けたらどうなるのか。

物語のラストを見届けた時、あなたはきっと考えることをやめられないだろう。

★★★ Excellent!!!

掟に縛られる村。
それは幼い者同士の、いたずら心。冒険のようなものだった。

社会基盤が崩壊し、再生に向かう都市。その治安を守る者たちの任務は、軽いものではない。

全く『軸』の違う二つの物語。
両者に『関係』はない。
『鍵』はなにか?
『少女』の正体は?

読み解けば、罪悪感にさえ襲われるかもしれない。
だがその先にある。きっと解決の道が。

★★★ Excellent!!!

少子高齢化が進行し、政府が崩壊した近未来の日本ーー。地方自治体の自警組織『治安警察局』に勤める二十代の女性・一ノ瀬千幸は、同僚の佐伯とともに、貴重な若手の一人だ。ある日、二人は記憶のない少女を保護した。彼女の身元の調査を始めた矢先、佐伯は失踪してしまう。

一方、場所も時代も判然としないある『村』では、家族や結婚という概念のない暮らしを、村人たちは送っていた。子ども達を含む集団は、『協会』に決められた『単家』で暮らす。『教師』達に指導された穏やかな村の暮らしは、掟に縛られたものでもあった。村の少年ユウマは、大好きなチィ姉ちゃんと一緒に、子どもには禁じられた村の『夜の祭』を覗き見てしまう。その時から、穏やかな村の暮らしは変わってしまった。


ユウマ達サイドの『全の章』、一ノ瀬サイドの『一の章』。二つのストーリーラインがクロスカットする構成の物語です。物語が進むに従い、謎がひとつひとつ解け、人間関係が明らかになっていくさまが楽しく、読むのを止められなくなります。ストーリーが収束し、彼等が新しい希望に向かって歩み出す結末は、素敵でした。
ミステリー要素を含むSF、ディストピアものがお好きな方に、お薦めします。

★★★ Excellent!!!

この作品を見て全てを差し置いて言いたいこと、それは俺のバカ野郎!ってことだ!何でこれを一気読みしなかった!そしたらもっともっと感動を味わえたのに!解けていく謎、地の文から溢れる作品の空気!一気読みなら絶対もっともっと楽しめたんだ!バーカバーカ俺のバーカ!時間置いて読んでもすっごい楽しかったけどな。とにかく、まだこれを読んでない人!お前は俺になるんじゃねえぞ!だから一気読みするんだ!あっという間に12万字なんて過ぎちまうぜ!

失礼しました。
さて、正直困っています。ストーリー解説をしたいのですが、何を書いてもネタバレになりそうな気がしているからです。ミステリのネタバレをするというのは、ともすればボコられても文句が言えないレベルの代物です。なので2点だけ、言わせてください。
・この物語は主に2人の人物の視点で話が進んでいきます。
・最初はつながりが分かりませんが、読み進めていくうちに
「あれ……?」
となっていくでしょう。
これ以上は言いませんし言えません。気になった人、是非とも読んでください。ただし、読むときは一気読み推奨ですよ!でないと私みたいになりますから(笑)

★★★ Excellent!!!

「全の章」と「一の章」という、大きな二つの物語がそれぞれ動き、絡み合っていく。異なる二つの物語がどう関わっていき一つの物語となるのか、がこの作品最大の魅力だと思う。

掟に従って人々が暮らす、「結婚」「家族」という概念の存在しない村。この村を舞台とした、ユウマを軸として進む物語、全の章。
カメラや携帯端末と言った現代の機器が登場する近未来。自警組織「治安警察局」に所属する一ノ瀬を軸とした、保護された一人の少女をきっかけに始まる物語、一の章。
一見すると全く縁のなさそうな二つの物語が、時の流れに従って少しずつ関わっていく。この過程は読んでいて驚きを隠せない。物語の真相を知った時、あなたは何を思うだろうか。
きっと普段は気付かない、大切な何かに気付くことが出来ると思う

★★★ Excellent!!!

全の章・一の章と二つに分かれて進む当物語。
それらはお互いに歩み寄って一つの話へと昇華されていくのですが、交わる瞬間に物語は新しい驚きを見せつけてくれます……!

日本政府崩壊後というディストピアを舞台に繰り広げられますが、なんと言っても注目は全の章で語られる異様な村社会。発展途上国のようでもあり、民族レベルまで後退してしまったかにも見える不思議な光景。

一の章では携帯電話まで登場するのに、なぜ同じ国でこのような集落が存在してしまったのか? そんな好奇心が抑えられず、悔しくも一日ですべて読まされてしまいました(笑

国の有り様、そして家族の有り様について考えさせられることも多く、構成力・伏線も絶妙。その完成度の高さもさることながら、十二万字程度でそれらを読後感よくまとめ上げた作者の力量に感服です。

カクヨムでは比較的ライトな物語が多いですが、こちらのお話はやや正当ミステリ寄り。本格が読みたい方こそ是非手に取っていただきたい作品です。

★★★ Excellent!!!

決定的な少子化によって政府の統治が崩壊した未来の日本。
圧倒的な高齢社会は、地方自治によって辛うじて存続する。
そんな緩やかなディストピアを舞台に描かれていくのは、
交互に語られ、やがて真相を明らかにする2つの物語だ。

掟に従って、静かで素朴な暮らしを営む『村』がある。
家族や血縁という概念は存在せず、『単家』毎に住み、
日がある時間に働いて夜は眠り、『外』を知らない。
禁断の『森』があり、そこに『追放者』が住んでいる。

一方、現代日本の延長線上にある高齢社会の現実では、
当然ながら若い働き手の不足がさらに深刻化している。
分断された老人の暮らしには孤独死の問題が付き纏い、
労働可能な世代の多忙ぶりも生半可ではないようだ。

物語の鍵となるのは、アリスになぞらえられる少女。
13歳の美しい少女は、『豊穣祭』の夜の秘密に触れ、
禁じられた『外』との繋がりを得ることとなった。
失った記憶を少女が取り戻すとき、物語は大きく動く。

巧みに隠されたバラバラのピースが加速度的に繋がり、
一気に真相を明らかにして、物語世界を大きく揺るがす。
その見事な構成に引っ張られ、目を離すことができず、
ほのかな希望が胸を打つラストまであっという間だった。

7歳のユウマと13歳のチィ姉ちゃんの結び付きと、
その体験に起因するユウマの人間形成が素敵で。
負けるな、まっすぐに進め。
と、ユウマの背中を押してあげたくなった。

小さな社会を描くことで提示される大きな物語。
面白かったです。