楽園の秘密を知った子どもたちは、それでもなお

とある閉鎖的な村がある。そこには、独特な風習を用いて生活する人々があった。
一方、犯罪が渦巻く、ほとんど機能停止した近代社会がある。

この作品はあらすじにもある通り、真逆な二つの世界が交互に綴られていくサスペンス、ヒューマンドラマです。最初こそ共通点のない分かれ道のようでした。しかし、物語が進むにつれて道は一本となる。
すべてが繋がる瞬間が快感であり、不快でもある。この物語の正体を掴んだら、まさにそうとしか言えない。
どうしてそうなったんだろう、正解はなんだったんだろう、どこで間違えたんだろう。彼らの感情に激しく突き動かされます。それでもなお、彼らは立ち向かう。

私の悪い癖は、あらすじから先に物語の内容を読み解こうとするところです。そして、こういう類の物語が大好物です。
しかし、そんな悪い癖で読みながらも、楽園の秘密が明かされたシーンはワクワクし、物語を夢中で読み貪っていた子どもの頃を思い出しました。
それと同じく、物語に出てくる村の子どもたちは好奇心旺盛で、村の「外」を知りたがる。知らない方が幸せなことも確かにあるでしょう。できれば知りたくなかった側面や真実を思いがけず目の当たりにしたら、ショックで言葉も出ません。それからどうやって生きていけばいいのかわかりません。
これは、そんな楽園で生まれた子どもたちの、子どもたちによる救済の物語。意思は確実に受け継がれていき、それがたとえ真っ暗闇な答えでも、迷っても、道はいつか開けるはず。
ぜひ、ご一読を。ぜひ、一気読みしてください。

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