美麗な鮮血に酔いしれ、熱く燃え滾る戦いに瞠目せよ

生まれながらの不運を身にまとう主人公の少年、鬼童妖(キドウ アヤカ)は、この日も自身の不運を呪っていた。誘われるように迷い込んだのは現世とは違う気を孕んだ異界。そこで出会ったのは、美しく可憐な鬼姫、夜弥(ヨミ)だった。
不運な体質の主人公と、千年もの時代を孤独に過ごした鬼姫が血の約束を交わしたとき、現世は混乱と闇がはびこう魔窟へと化す。
鬼姫は、現世「倭」の人々と手を取り合うことを望む。しかし、倭は彼女を裏切った。倭がすがったのは「仏」である。その仏が物の怪を倭から追放したのだ。
仏に奪われた過去にとらわれ、彼女は復讐を誓っている。一方で、アヤカにも忌まわしい過去がつきまとう。
二人は過去と対峙し、答えを見つけることができるのか?

本編をざっくりと分類するなら、和風ファンタジーです。しかし、舞台は現代。雅な背景にうつつを抜かしてはいけない。油断ができない。目が離せない。
物の怪といえば、おどろおどろしく静かにねっとりとしているイメージなのですが、また私もそんな物語の紡ぎ手でもあるのですが、本作を読んで衝撃を受けました。背後から鈍器でぶん殴られた気分です。
熱い。とびきり熱い。触れると火傷しそうなくらい、熱いバトルが待っていました。
キャラクターも魅力的で、主人公のアヤカがかっこいいんです。また、彼らと対峙する悪役もかっこいい。巧みなセリフ回しに何度息を飲んだことか。
また、どちらかというとヒーロー的存在になる「彼ら」が悪役に回るという逆転の発想に脱帽しました。善悪は果たしてどちらか、考えさせられるストーリーです。
それに何より、文章が細やかで繊細かつ大胆で、他の追随を許さない。堅くも美しい。鮮やかなあかいろがいまだに網膜から離れてくれない。
作者様の描く美麗な鮮血が舞う映像描写と、確かな筆致に酔いしれること間違いなし。とにかくかっこいいんです。読まなきゃ損です。勿体無い。

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