点と点が繋がって、線となった時

 設定が秀逸でした。決められた掟に縛られる村に閉塞感を感じましたし、現在の日本が抱える問題を見据えた近未来の姿など、よく練られていてリアリティを感じました。二つの世界が平行して語られていきますが、あれこれと想像しながら読み進めるのは楽しい作業でした。

 村で暮らす三人の子供たちを中心に物語は語られ、歪な村の姿が徐々に浮かび上がっていきます。一方、近未来の世界でも、自警組織に属する女性の前に謎めいた少女が現れて、事態が変化していきます。村でのお話は、どこか詩的で幻想的な文体であるのに対して、近未来の方は端的でリアリスティックなのも面白いし、上手いです。


 二つの世界は交錯していき、後半にはドラマチックな展開が待ち受けていて、思いも寄らない事態に発展します。読む手が止まらず、ぐいぐいと読んでしまいますね。

 テーマ性も深く、ラストも素敵な余韻が残りました。オススメです!

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