世界と心が交差しながら進む、極上のファンタジック・ミステリー!

 この物語は家族の概念がない「単家」の世界と、自治区の世界が交互に描かれることによって、謎が深まり、そして解決していく物語だ。
 「単家」とは、一つの「家」の単位であり、家族や結婚の概念がない。周期ごとに人間が家を移動して、一つ屋根の下で暮らす。しかしお転婆なチィは、村から追放された「追放者」に「結婚」や「家族」について聞き出そうとしていた。弟分のユウマは、いつもチィに手を引かれていた。そして兄貴分のセイジは、そんな二人をいつも守ってくれた。しかし、ある祭りで禁忌を犯したチィは、蔵の中に閉じ込められる。ユウマとセイジは、チィを助けようと奔走し、セイジは村を支配している「教師」になることを決意する。
 一方、自治区ではチサトと名乗る少女が保護された。保護を任されたのは、一ノ瀬と佐伯のバディだった。チサトは何もしゃべらなかったが、思い出したかのように、「ホウジョウサイ」という言葉を発し、「兄ちゃんが村を壊そうとしているから、助けて」と一ノ瀬に訴える。しかし、そんな中、佐伯が失踪する。

 佐伯の失踪の謎。チサトの正体。そして「単家」と禁忌とは?
 
 二つの世界観が同時に味わえる贅沢な作品。
 民俗学的な要素を持つ村の世界と、自治区の世界。
 いずれも興味深く、そこに組小細工のように謎が散りばめられる。
 そして物語は疾走感を失わずに、全ての伏線を見事に回収して、感動的なラストに向かっていく。

 まさに、まさかのどんでん返し。

 是非、是非、ご一読ください!

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