物語に迷い込む快感を味わえるミステリー

ふたつの全く異なる世界でそれぞれに繰り広げられる物語。
全の章で語られるのは、不気味ですらある『村』の存在とそのしきたり。それは概念に凝り固まって行き過ぎた世の中を見せられるようで恐ろしい。
一の章で展開するのは現代的なミステリー。
この二つの話が交錯するとき、読者は思わず唸ることでしょう。

其処此処へ仕掛けられた巧みな伏線と、読者を迷路へと導く筆致。
そこには森へ迷い込むように物語の中へ迷い込む快感があります。

家族とは、社会の在り方とは、その中で生きることとは、何のためか、誰のためか。
生き続けることにどんな意味があるのか。
ストーリーの面白さだけでなく、ひとの根源のところに繋がるテーマも深い。

独特な世界観にどっぷりと浸って欲しい、できればまとまった時間で読み切って欲しい、手応えの強い作品です。

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