妖精さんと言えば、色々なイメージがあります。
人間と仲良くなって、色々な手助けをしてくれる存在(コボルトとかピクシーとか)と、ちょっとした気まぐれで人間の運命を変えてしまう怖い存在(バンシーとか)などがあります。
本作では「妖精」が感染症という形で人々に憑依するような形で出現しますが、その姿が可愛らしいので次第に受け入れられ、社会現象みたいにして「当たり前」にブームにまでなっていく。
そんな中、たった一人だけ妖精とは縁のない人生を送る少年が現れて……。
疎外感のある日々を送る少年。その少年は他の人と何が違うのか。彼は果たしてなんらかの「欠落」を持っているのか。
やがて明かされる妖精さんの真実。
結末まで読んだ時、この妖精さんと、その先で起きた「変化」は何かのメタファーなのではないかとも考えさせられました。
現代社会でも、こういう「妖精さん」に該当する何かはあるかもしれないし、そこで疎外感や劣等感を抱かされる人間もいるはず。
でも、それが本当に悪いものなのか。多数決によって何が普通か決まってしまう社会では、尊いはずのものが「差別」の対象になることもありうる。
そんなテーマ性も感じられる作品でした。