氷は無邪気で気まぐれ、そして、残酷だ。それでも氷上の人間は美しい。

まだ作品を読んでいる途中でのレビューです。
ただ、誰かを好きになったとき、想いが心に閉じ込められず言葉として溢れて告白してしまうように。
この作品に対する、様々な言葉を表現したくて堪らなくなったので、レビューさせて頂きます。

私は数年間ですが、かつてスピードスケートをやっていました。
本作品はフィギュアスケートをメインに話が進みます。
作者さんはスケーターではないとの事ですが“エッジの右、左を使う、エッジの点に乗る”などの表現に代表されるように、私がスケートをやっていた当時を思い出す程にスケートに対する表現がリアルです。
まるで自分がスケート靴を履き、氷を滑り、削る音が聞こえてくる程に。

これは映像では決して表現出来ません。
なぜなら映像で表現した場合、なんの変哲もないフィギュアスケートのワンシーンになってしまうからです。それでは「凄いジャンプだね」「高い得点」だけの感想で終わってしまう。

活字でフィギュアスケートを表現する事で、氷という気まぐれで残酷な無機物との対話を試みるスケーターの心理が見えてくる。
なぜその「曲」を選ぶのか?
どの「曲」で滑りたいのか。
フィギュアスケートと「音楽」の繋がりも私は本作品で知りました。
時にファンタジー要素も散りばめられ、フィギュアスケートを知らない私でもぐいぐい惹き込まれ読んでいます。
ここまで緻密に描かれたフィギュアスケートの作品を、私は他に知りません。




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