世界観や情景を描き出す地の文が綿密で緻密であるが故に少し文章が重く感じるかも知れません。
しかし、そこで紡がれる文章達が世界の成り立ちや文明の進化、そして主人公とその仲間たちの生き様を色付けていきます。
そしてこの国の成り立ちに繋がる魔女の存在と隠された歴史。巻き込まれた少年少女たちがこの世界の命運を担う戦いへと誘われて行きます。
最初に書きましたが、ライトなノベル好きの一部の方には少し取っ付き難い印象が有るかも知れませんが、世界を救う運命に選ばれた少年少女たちと、魔法が使えない魔法使いの少年の空を飛ぶという夢に貴方も誘われてみませんか? (^-^ゞ
この物語の素晴らしさは他の方々がレビューして下さっているので、そちらにおまかせしまして。
私はどうしても技術的な側面からこの作品を掘り下げたくて、非常に稚拙で申し訳ありませんがレビューさせて頂きます。
まず私がプロペラのついた飛行機が好きな人間であると先に申し上げておきます。
そしてこの作品は、飛行機好きな方には是非、読んで頂きたい作品です。
以下、専門的な用語が出てきますが申し訳ありません。
私が惚れたのはこの作品に登場する蒸気機関のエンジンを搭載した飛行機。
恐らくこちらは空冷式エンジンに対する水冷式エンジンの位置付けかな、と考察。
そうして考えてみると、私の目の前に空冷式の機体より機首の長い、ややトップヘビー気味な重厚な機体が表れました。
蒸気を噴き上げながら飛ぶ機体。
この機体をイメージして惚れました。
そして硬式飛行船のリーディア号。
これは物語中に登場する、内部に全通式の滑走路を備えた飛行船です。
もちろん着艦制動策付き。
縦式か横式かは明示されていなかったと思いますが、私のイメージでは敢えて縦式の制動策。
主人公の着艦シーンは脳内に映像が浮かぶほどにリアルです。
こういった細かな設定を説明的になりすぎず、そして殺伐とならず、童話のように柔らかな、綺麗な文章で物語はまとめられています。
飛行機が好きな方はこういった細かな設定にも注目しながら読んで頂きたい作品です。
長文で失礼致しました。
読み始めて驚いたのが地の文の丁寧さです。
とても丁寧に描写されていて、情景が鮮明に目に浮かぶようです。それなのに、サラッと読める。丁寧なのに、読みやすい。だから、次々と読み進めてしまいます。
勿論、会話文も丁寧で読みやすく、登場人物の掛け合いに引き込まれます。個人的に、ルカくんとアンナさんの掛け合いはついにやけてしまうシーンが多くて好きです。
この小説は、近年ではあまり見ないスチームパンク系のファンタジーですが、どこか懐かしさを感じてほっとします。安心して読める小説だと思いました。
蒸気と機械の組み合わせに胸躍る方は、間違いなくハマります。
ボリュームがあるのに、読みやすくてあっという間に読み進めてしまう。とても魅力的な小説です。
本作は魔法使いの家系に生まれながら、魔法が使えないことで生まれ故郷を離れた主人公の物語です。
かつては森に捨てられていた子どもたちも、作中の時代では比較的穏当な扱いとなり、主人公は都市の学院に入学し、気の合う仲間たちと出会いながら、科学の力で空を飛ぶという新たな夢を抱くようになります。
そのように一見すると魔法からの脱却を描いた作品にも思えますが、タイトルや作中の台詞からも、本当の魔法とは単純な力ではないのではとも感じさせます。
また文章表現の完成度は高く、描くべきことはきっちり漏らさず描くという徹底さを感じさせます。
昨今のファンタジー作品が単文や会話による進行を多用する中、地の文へのこだわりの強さは往年のファンタジー小説を彷彿とさせます。内容や文体ではなく、文章そのものが体を表す稀有な例とも言えます。
昔ながらのファンタジー小説が好きな方には特にお薦めです。
魔法を使えない魔法使いのルカ君が家から出されることからお話が始まります。
そこから出会いを経て自分達の立場などで巻き込まれ、やがて大きな敵とも戦うことになるそんなお話です。
ここから僕個人の感性になりますが、ストーリーと言うより物語といった、こう水彩画で描いたような優しい世界が広がっている感じのお話でした。
その一方で敵に挑むシーンや飛行機を飛ばすシーンなんかはその人物達の心境、緊張感が伝わってきます。
私事になりますがキャッチコピーの「エナーシャ」ってなんだろ?ってとこから物語に入りました。
飛行機のエンジンを始動させる為にクランクなんかを差し込んで回してプロペラと直結させる機構のこと(合ってます?)なんですね。
先に調べたお陰で物語中にグッと入り込めました。
この物語は完結していますので、今からじっくりと終わりまで読むことが出来ます。この優しくもちょっと切なさも感じる物語を是非とも読んでいただきたいです。