誰にだって使える魔法がある

本作は魔法使いの家系に生まれながら、魔法が使えないことで生まれ故郷を離れた主人公の物語です。
かつては森に捨てられていた子どもたちも、作中の時代では比較的穏当な扱いとなり、主人公は都市の学院に入学し、気の合う仲間たちと出会いながら、科学の力で空を飛ぶという新たな夢を抱くようになります。
そのように一見すると魔法からの脱却を描いた作品にも思えますが、タイトルや作中の台詞からも、本当の魔法とは単純な力ではないのではとも感じさせます。

また文章表現の完成度は高く、描くべきことはきっちり漏らさず描くという徹底さを感じさせます。
昨今のファンタジー作品が単文や会話による進行を多用する中、地の文へのこだわりの強さは往年のファンタジー小説を彷彿とさせます。内容や文体ではなく、文章そのものが体を表す稀有な例とも言えます。
昔ながらのファンタジー小説が好きな方には特にお薦めです。


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