まずこの作品は読み飛ばさずじっくり、じーっくり読んで欲しい作品です。
何気ないセリフの一つ一つや描写に細かな設定や各人が持つ哲学が散りばめられているからです。
ストーリーとしては特殊部隊の新兵が戦いを通じて成長していく展開。
伏線は見事に綺麗さっぱり回収されます。
この辺りプロットを本当に丁寧に作られたのだなと思い、私自身見習わなければならないなと思う所です。
細かく設定された世界観に花を添えるのが、哲学を持った渋い大人達。
彫りの深い(私の脳内イメージ)渋いおじさん達がそれぞれの哲学に殉ずる姿は、カッコいいの一言に尽きます。
以下の症状がある方は是非読んで下さい。
◇人の言うことに「エゴだよそれは」と反論してしまう人。
◇妖精が耳元で叫んだら「耳元で叫ぶな」と言いたくなる人。
◇炎の匂い染み付いて むせる 人。
及び明後日なんてそんな先の事は分からない人。
◇一日に一度は「俺は面倒が嫌いだと言っただろう」と言う人及び「ナインボール」と聞いてビリヤード以外の何かを想像してしまう人。
◇ゲルマン忍法は存在すると思っている人。
◇ラブラブな天驚拳を練習中の人。
◇「師匠」「東方」と聞くと髭面を想像する人。
◇自爆と吐血は漢のロマンだと思う人。
◇SFを愛する、全ての人。
緊急事態が起こり、謎の多い最新鋭機(ロボ)にやむなく搭乗する主人公。そこに強力なライバルが――と、ロボもの基本のツボを押さえまくる本作。「よくわかってらっしゃる」と、巨大ロボット系ファンの方なら思うはず。作者が楽しんで書いていると思われ、とても生き生きした手触りがあります。
主人公の恩師が敵として立ちふさがったり、最新鋭機に謎の人格が封印されていたりと、冒頭から提示された謎に牽引されるので、物語は中だるみせず進みます。
本作最大の魅力は、世界の隅々まで詳細に検討された設定の見事さ。緻密に設計されているため、物語の進行と共に世界観がちらちら垣間見えるのが、なかなかの快感です。