精霊と人間の大戦の爪痕が残る世界。孤児として育ったディルは、ある日二人の青年と出会う。彼らと運命を共にすることでディルは禁忌を破ってしまい、それにより呪いを背負うことに。
ふりかかった呪いを解くため、ディルの、自分を見つける為の旅路が始まる──
特筆すべきは、美しい世界観の描写です。精霊や竜など人ならざる種族が生きている神秘的な世界が、流麗かつ繊細な言葉で紡がれており、複雑な設定はあるもののそれを感じさせることなくスッと物語に入ることができます。
そこにあるのは、『指輪物語』や『はてしない物語』のようなかつて誰もが憧れたファンタジー世界。洋画を思わせるような含みを持たせた会話も、この世界観を際立たせています。
内容は大人向け。恋愛の描写が濃く、主人公ディルに惹かれるアルヴィードとロイの恋の駆け引きもメインのひとつです。生きることに執着しないディルは、自分に優しくしてくれる人にならすべてを委ねてしまうような危うさを持っており、時折り微妙に手を出しながらも、ぐっとその熱を抑える魅力的な男達に、読者も時には甘く、時にはじれったさを感じながら読んでしまいます。
主人公を取り巻く運命が、読み進めていくうちに徐々に紐解かれていくのも面白く、また長寿の種族が多い為に、恋模様も複雑に絡んでおり、実はこの人とこの人が過去に…というように読めば読むほど意外な発見も。
生きる希望を失っていたディルが、二人の男との旅を通してどのように変わっていくのか、ぜひ見届けてほしいです。
人や精霊、竜や狼などたくさんの種族が住まう世界。過去に大きな戦いがあったその世界で、あまり恵まれた境遇とは言い難い人生を歩んできた主人公ディル。
まずこの主人公がとても美しく、儚い。
話し方の中に、自分を算段に入れてないような言葉が紛れていたり、戸惑っている表現もまたディルの儚さと美しさを良く表していると思います。
幸せや人の温もりに対してよくわからないと思っているディルの危うさには少しハラハラしますが、ある出会いからそれが変わっていく。
数々の運命に巻き込まれながらも、徐々に自分はどうしたいのかと前を向いて歩き出す姿が本当に綺麗。
そしてディルに触れていくことで変わっていく、共に旅をする仲間の感情が丁寧に描かれています。
『ここではないどこかへ、』
運命を、その宿命を諦めたように受け入れていくかに見えた人々が、愛する心と共にどういう結末を選び、未来を掴み取るのか。
この美しい物語を是非見届けてほしい。
「未分化」の主人公・ディルが孤独と迫害を耐えながら育ち、いつも寂しさを抱えつつもある出来事をきっかけに自らの運命に向き合い愛を掴み取っていく。
実はディルの出生が深く関わっていて、出会い、惹かれ、絡む出来事はやがて世界を揺るがすほどのものになる――――。
遅ればせながらextraエピソードまですべて読み終えることができました。
残酷な運命に翻弄されながらもひたすらにけなげなディルがとても可愛く、また純真無垢で美しく素敵でした。無意識小悪魔に男たちの心をかき乱すので毎回「甘ーい!」と悶えながら読み進めること必至でした。
個人的にはディルの《逆》分化ver.もどんなふうになるかなあと考えたりなどしました。そして作中では結果として真の想いを通じ合えなかった「彼」も最後の最後では何はともあれ幸せそうで良かったとじ~んときました。
素敵な作品をありがとうございました。
過去の大戦による因縁の残る、仄暗い雰囲気の世界。
入念に考え込まれた設定の土台の上で、主人公であるディルを取り巻く緻密な人間関係とその運命を巡る旅が描き出されています。
ディルは触れればすぐに壊れてしまいそうな繊細さで、その儚さと無防備さに惹きつけられます。また、ディルが気になる男性陣との三角関係の描き方が非常に巧みで、「ディル、気がついて!」とやきもきしたり「ロイ…」と切なくなったり。
設定や人物描写が細かいところまで書かれているのでまた少し日を置いてから読むと違った印象になりそうだなと思いました。
個人的に、ディルがよく「少し、眠ってもいい?」とか二分節でだけ言葉少なめに話す感じがすごく好きでいいなあと思ってます。
メインキャラクターの容姿が美しく魅力的、というのはよくある話だ。誰しもお気に入りのキャラは見た目も中身も素敵な人であってほしいもの、王道になってしかるべきと思う。
けれどこの主人公ディルの登場シーンは一味違う。その類稀な容姿を書き表すのに合わせてちらりちらりと描写されるその仕草、表情、台詞──
「詩人……というほどでは」
この溜め! この「……」がね!!!(読んだ方にしかわからないネタ)
映画館で、スクリーンの向こうからとびきりの俳優が微笑みかけてくれるのに呆然としてしまうような、読者も一緒に魅了される感じがあった。こんな体験は初めてだ。
だからまずは皆様、そのシーンまでご覧いただきたい。最初から数えて二話目だ。そこまで読んでしまえば、あとはもう水のようにすうっと染み込む上品で読みやすい文章引き込まれ、結末までツルッと飲み込んでしまうだろう。
迫りくる悲痛な運命の中で紡がれる、美しく切実な恋愛模様。主人公を愛する男達は、惚れた相手を抱き寄せることに躊躇いがない。切ない抱擁から衝動的な口づけ、ちょっと色っぽいシーンまで、読者の心ゆくまで味わわせてくれる。大満足である。
切なく美しくイチャイチャはたっぷりな恋愛が好物な大人の皆様には是非ご一読いただきたい作品だ。
世界設定は比較的複雑ですが、すんなり違和感なく受け入れる事が出来るわかりやすさで、数話でどのような世界観なのかが理解でき、その下敷きの上で進む物語を純粋に堪能する事ができるので、普段ファンタジーを読まない層でも、とっつきやすいと思います。
何百年も生きる種族であったり、姿を変える種族であったりで、種族ごとの行動パターンや考え方が、普通の人間の経験しかない読者としては、突飛に思えたり、信じられないように思えるものなのですが、彼らのような存在ならそう考えてしまうだろうな、という説得力があり、納得できます。
そのような人間とは違う考え方をもつ登場人物が、とても魅力的で、考えは理解しがたいけど、その気持ちがわかってしまう絶妙な心理が、物語をより深めている感じです。
恋愛要素が強いけれど、主人公の成長物語でもあり、その周囲の心も引っ張られて前に進んでいく様子も、物語の核として追わずにはいられません。
一人の主人公に、多数の愛が殺到する形になりますが、登場人物の人格が完成されているため、暗いドロドロな要素はなく、ただ甘さと切なさだけが胸に残る感じでしょうか。
ファンタジー好き、恋愛もの好きの双方を満足させる内容です。
まず特筆すべきは世界。情景がありありと浮かんできます。
そこに歴史に根付いた人の在り方が付与されてて重厚な世界になってます。
ゴブリンとかスライムなど出てきませんが、しっかりしたファンタジーです。
いや、これこそファンタジー! トールキンの中つ国に引けをとらないです。
時代的には戦争の傷が癒えきっていない頃で、生活している人にとっては厳しいのかもしれません。
そんな中で生きてきた主人公のディルもまた儚い。しかし、まわりにいる人の支えで成長していくというね。
出てくる人全員感情豊かなのも好き。言い方が悪いですが、どいつもこいつもかっこいい!
彼らの悩みも世界の在り方につながっているのも読み手を没入させてくれる要因になっていると思います。
ファンタジー世界にどっぷりはまりたい人はぜひどうぞ。どうぞ!
自分が何者かも知らず、孤独に生きてきた主人公ディル。そんな中で助けられた青年との出会いと別離から始まる物語。
「必ず迎えに行ってやるから——」
この言葉を支えに青年と別れてからも何とか生き続けてきたが、とうとう諦めたときに救われたもう一人の恩人(おっさん)との更なる出会いから、とある呪いを解くための旅が始まる。
しっかりとした世界観がありつつも、複雑になりすぎないようわかりやすく描かれています。文体はweb小説っぽさはなく、特に縦読みが好きな方は非常に読みやすいと思います。
謎を含ませつつの展開もさることながら、特に3人の恋模様がたまりません!誰と結ばれても文句はないイケオジ(青年?)揃いではありますが、それでも推しがフラれて悲しい私のような方のために、もう一つの物語も用意されているのでご安心を。本編を読まれたあとにはそちらもオススメです。
サブキャラまでもが全員魅力的に描かれていて、いつまでも読んでいたくなる物語。本当に大好きな作品です。