不覚にも、主人公に一目惚れしてしまった

メインキャラクターの容姿が美しく魅力的、というのはよくある話だ。誰しもお気に入りのキャラは見た目も中身も素敵な人であってほしいもの、王道になってしかるべきと思う。

けれどこの主人公ディルの登場シーンは一味違う。その類稀な容姿を書き表すのに合わせてちらりちらりと描写されるその仕草、表情、台詞──

「詩人……というほどでは」

この溜め! この「……」がね!!!(読んだ方にしかわからないネタ)

映画館で、スクリーンの向こうからとびきりの俳優が微笑みかけてくれるのに呆然としてしまうような、読者も一緒に魅了される感じがあった。こんな体験は初めてだ。

だからまずは皆様、そのシーンまでご覧いただきたい。最初から数えて二話目だ。そこまで読んでしまえば、あとはもう水のようにすうっと染み込む上品で読みやすい文章引き込まれ、結末までツルッと飲み込んでしまうだろう。

迫りくる悲痛な運命の中で紡がれる、美しく切実な恋愛模様。主人公を愛する男達は、惚れた相手を抱き寄せることに躊躇いがない。切ない抱擁から衝動的な口づけ、ちょっと色っぽいシーンまで、読者の心ゆくまで味わわせてくれる。大満足である。

切なく美しくイチャイチャはたっぷりな恋愛が好物な大人の皆様には是非ご一読いただきたい作品だ。

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