概要
祝詞を紡ぎ出しながら、彼女は水に触れる指となった。指に遊ぶ水となった。
森と鉄の国からやって来た鬼術師の青年と、太陽と砂の国に住む祈術師の少女との、異文化交流譚。近世風な世界が舞台の物語です。
風土記系競作企画「祝」 http://still-in-noise.a.la9.jp/fudoki/kikaku/2020_01_iwai/kikaku.html 参加作です。
風土記系競作企画「祝」 http://still-in-noise.a.la9.jp/fudoki/kikaku/2020_01_iwai/kikaku.html 参加作です。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!日常の風景と文化の中に、この国の歴史が見える
話の流れだけをいえば、帝国から来た人を田舎の少女が案内するのを眺めている感じになるのだけども。
この世界の空気感、文化、空気の匂いさえ感じられる表現豊かな文章に、歴史や過去の出来事を空想したり、これまでの人々の歩みを感じ取ったり。
呪文や印などで発生する人知を超える事象の技をファンタジーでは魔法や魔術とするけれど、その概念を丁寧にひも解いていて、それがこの世界ではどのようなものなのかをさり気無く教えてくれ、神術と魔術が違っていく過程のドラマにも想像が広がります。そしてそのまま魔術を使って行った場合の結果も予感させて。
土地の様子が鮮やかに描かれているから、読んでいるうちに気付け…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ただうっとり、見知らぬ世界の空気へ身を浸す読書体験
物語は、十三歳の少女サヴァが紡ぎ工房でのつとめに勤しむ場面から始まる。女達と作業歌を共に歌い、見下ろす手元は屋根代わりに乗せられた日除けから差し込む光と影のコントラストが鮮やかだ。
きっととても暑くて、日差しの強い土地なのだろう。きっと作業場には歌だけじゃなく、女達が葉をこそいで繊維を取り出す、石台と削ぎ棒の擦れる音も響くのだろう。歌に合わせてリズム良く。
この最初の二段落を読んだだけで、脳裏に描かれた美しい情景にため息が出た。だからこの物語を読もうか読むまいか迷っているあなたも、まずははじめのところを読んでみると良いだろう。こういう「自分の知らない世界を覗き込む」ような話が好きな人なら…続きを読む