内容から紹介するならば『架空の国と地域を舞台に、主人公二人の視点を通してそこに暮らす部族の生活や風習を描き出すファンタジー』との説明は可能だ。
しかし、本作品はそう一筋縄には行かない。
たとえば冒頭から次々に固有名詞が登場するが、それらが人名なのか地名なのかそれとも部族の名前なのか、文脈からは読み取ることができない作りになっている。作中文化に起因するトラブルが突如発生して、その理由が後から説明される箇所もあった。
必然として読者にはメモを取るなどの積極的な読書姿勢が求められるのだが、そうして世界と物語への理解が深まるほどに『自分の意思で読み解いている』という実感が生まれ、さらには喜びがそこに付随する。
『読む』のではなく『読み解く』、体験としての読書。是非挑戦してみて欲しい。