短編ながら、しっかりと構築された世界の雰囲気を存分に堪能できます。
デラフ族の集落の構造が分かりやすく描写されており、実際にそこを歩いてみたくなるほどでした。
聞き慣れない固有名詞は深く考えずに読み進めれば、その先でちゃんと分かるようになっています。得ていた情報が徐々に色づいてくる感覚は楽しく、少女の目線で、少年との微笑ましい交流も楽しめます。(微笑ましいだけじゃあないのですけれど、これは実際に読んで感じていただきたい!)
他部族とのいざこざ含め、族長の娘である少女と彼女の周囲の人々がどうなっていくのか。今後を想像して楽しめる、余韻のあるお話です。
お薦めします(^^)!
内容から紹介するならば『架空の国と地域を舞台に、主人公二人の視点を通してそこに暮らす部族の生活や風習を描き出すファンタジー』との説明は可能だ。
しかし、本作品はそう一筋縄には行かない。
たとえば冒頭から次々に固有名詞が登場するが、それらが人名なのか地名なのかそれとも部族の名前なのか、文脈からは読み取ることができない作りになっている。作中文化に起因するトラブルが突如発生して、その理由が後から説明される箇所もあった。
必然として読者にはメモを取るなどの積極的な読書姿勢が求められるのだが、そうして世界と物語への理解が深まるほどに『自分の意思で読み解いている』という実感が生まれ、さらには喜びがそこに付随する。
『読む』のではなく『読み解く』、体験としての読書。是非挑戦してみて欲しい。